深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ拾壱
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捕まってどれくらいの時間が経っただろうか。

真っ暗な空間の中で私は考えを巡らせる。本当に真っ暗なのだが時々私が引きずり込まれた扉が開き、新たな犠牲者として私と同じく暗闇に囚われて行く。

何も出来ないことが歯痒いが、現状私に出来ることは無い。

発信器も多分この異能の中では意味が無いだろう。

捕まった時に数秒間時間を止めたので、無効化を持つ太宰さんあたりなら異能の種類くらいは気づいたかもしれない。

「ふふ…」

最初の頃はだいぶ警戒していたのに、真っ先にSOS出した相手が太宰さんだなんて……

思わず嘲笑が漏れた。
どうして毎回助けを求められる相手があの人だけなのだろうか。

しかし、何時までもこのままじゃ拙いよね……

身動きがほぼ取れない上に、捕まってるのはロープとかじゃなく異能の巨大な手。しかも異能空間……絶望的だな。

でも、ずっとこのままではいずれ探偵社にも被害が出る。万が一にでも私を人質に探偵社に脅しをかけられては困る。

私は必死に身体を捩る。少しは隙間が出来ればいいんだけど……

「痛った!」

腕が厭な音を立てる。

……これはやらかしたかもしれない。

左腕に力が入らなくなっちゃった…

そしてすんごく痛い。尋常じゃなく痛い……

肩外れたかもしれないな。

でもおかげで鞄に手は届くようになった。

逃げられるかは判らないけど、扉が開いた瞬間に何か仕込めたら可能性はあるかも……

と考えているタイミングで扉が開いた。

「え、待って早いって……!」

私は新たに連れて来られた人物を見て思わず台詞を詰まらせる。

「ナオミちゃん!?」

「!
麟さん!」

同じく囚われたのは谷崎ナオミちゃんだった。拙い……探偵社にも被害が出始めてしまった。

「ナオミちゃん、最後に誰と行動してた?」

「えっ…兄様と敦さんですわ。」

って事は谷崎くんと敦くんには状況は伝わったという事か。

探偵社の方に連絡をしてくれれば……いや、多分谷崎くんはナオミちゃんに何かあったなら冷静な判断は無理だろう。

多分乗り込んでくる……どうしたものか…。

そう思案しているうちにまた扉が開いた。……厭な予感しかしない。

「うわあああああ!」

厭な予感は的中……谷崎くんでした。まあ情報源が増えた…とも云えるけども。

「ナオミ!」

「兄様!」

ロミオとジュリエットになる前に話を進めとこう…。

「谷崎くん、少し訊きたいんだけど彼女の異能力はどの様な物か判った?」

「彼女の異能は異空間を作ってアンという異形の生物を操る能力の様です。
脱出は白いドアから可能らしく、僕達が今いる部屋は中からは開けられないらしく……敦くんが今向こうの部屋で交戦中です。」

「つまり、あっちの部屋に出ないと外に出られないのか……」

谷崎くんの報告に私は溜め息を零す。

「谷崎くん。扉がもし開いた時に何時でも対応出来るようにお願いしても良いかな?」

「勿論です」

頼もしい台詞に思わず笑みが零れる。流石は武装探偵社の社員だ。
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