深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ拾肆
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ピッ
ボタンを押して電話に応える。
「はい、椎名です」
『麟、今すぐそこを離れろ!』
「乱歩さん?」
相手は乱歩さんだった。普段とは打って変わって切羽詰まった様子に私は驚く。
「どうしましたか?」
『ポートマフィアがお前達を餌に組合を釣った。組合の刺客がそっちに向かってる。国木田達が救援に行く予定だが、どうなるか判らない。』
そういった事があると予想してない訳じゃないが、いざとなるとやっぱり焦る。
「……判りました。急いで全員避難します。」
私は1回深呼吸をして呼吸を整える。冷静に判断出来るように……
絶対に春野さんもナオミちゃんも危険な目に遭わせたくない。
『…麟』
急に静かな声で乱歩さんが話す。急だったので私は吃驚して、少し間があいて答えた。
「……はい」
乱歩さんは相変わらず静かな口調で少しゆっくりめで話す。
『無理をするな、と云ってやりたい所だがそういう訳にもいかない。
異能力も必要なら使え。組合に異能がバレるバレない以前に捕まったら終わりだ。』
「はい、勿論です」
それくらい判っている。異能力も大切な人達を護れないくらいなら必要ない。
『だけど、一人で無理は絶対するな』
……?
無理して一人で無理するな?
「あの、どういう意味ですか?」
私が少し困惑したまま応えると、乱歩さんが電話の向こうで盛大に溜息をついた。
『ハァ〜、どうせ麟の事だから“絶対二人を逃がさなきゃ!”とか考えてるんだろ?』
「……そうですけど」
云っている事の意味が善く判らず、取り敢えず肯定すると
『違うだろ!“二人を”じゃない。“三人とも”だ!
お前が捕まっても駄目なんだよ!相変わらず莫迦だな!』
大声で思い切り莫迦にされた。
「は……」
乱歩さんの勢いが強すぎて反論する余裕も無かった。そのまま追い討ちをかけるように
『麟!
全員、絶対に無事に逃げ切れ!いいな!?』
一気にまくし立てて一方的に電話を切られた。
最後のアレは何だったのだろうか?
乱歩さんなりに気遣ってくれたのかな?
ムスッとした顔の乱歩さんが一瞬頭に思い浮かぶ。
なんだか無駄な力が抜けて小さく笑いがもれた。
「大丈夫」
私は一度息を吸って二人の方に歩き出した。
取り敢えず、組合の攻撃を避け、全員無事に避難する。
パシッと両頬を叩いて気合いを入れた。