深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ拾漆
1ページ/4ページ

私達は電車のボックス席に座っていた。先程ぶつかった少年も、折角なのでと一緒に座る。

「僕、夢野久作!おねーさん達は?」

夢野久作と名乗る少年はニコニコと笑ってそう訊いてきた。

「春野綺羅子です」
「谷崎ナオミですわ」
「…椎名麟です」

私達もそれぞれ自己紹介する。少年は思っていたより人見知りしないタイプの様だ。

「久作君は何処まで行くの?」

春野さんが笑顔で訊く。さっきまでの怖がってた顔からは想像出来ないくらいだ。

「えっとね〜、お兄さんの所に遊びに行くんだ!」

「お兄さんが居るの?」

楽しそうに話す久作君に春野さんが問い掛ける。

「うん!昔よく遊んでくれたんだよ」

そう云ってニコニコ笑う久作君。
相当そのお兄さんを気に入っている様子だが、話を聞いていると実の兄という訳では無いそうだ。

どんな人なんだろう……

「でも、凄いですわね。一人で列車に乗ってお兄さんの所まで行くなんて」

ナオミちゃんが関心しながら云うと、久作君はまた照れた様に笑う。

《間も無く〜雲水〜雲水〜》

列車のアナウンスがかかる。敦君達と落ち合う予定の駅だ。

やっと此処まで来れた……

安心感が一気に押し寄せる。

「あれ?久作君も此処まで?」

一緒に降りる用意をしている久作君に、私が問い掛けた。

「うん、そうだよ。」

それだけ答えて久作君は、私達の後ろについてきた。

こんな所に住んでるんだ…お兄さん……


「敦君!」

列車から降りた私達の方に駆け寄ってくる敦君の姿が見えた。

「椎名さん!
あ、春野さん、ナオミさんも!

ご無事でしたか!」

敦君が元気よく迎えに来てくれた。

「ええ…でも真逆事務員が狙われるなんて」

少しナオミちゃんの顔に影が落ちる。
しかし、敦君は元気一杯胸をトンッと叩いて云う。

「安心して下さい。僕達が避難地点まで護衛しますから」

全く、頼もしい後輩社員だことで

「じゃあ敦君、きっちり護衛お願いね」

私は自然と緩んだ表情で、敦君に云った。

「そうだ、紹介しますわ。
列車の中で知り合ったのですけど……」

ナオミちゃんがそう云うと、丁度ナオミちゃんの陰に隠れていた久作君がひょこっと出てくる。

そして、そのまま敦君にぶつかった。

なんか既視感が……
あんまり前見て歩かないのかなこの子……
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ