深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ拾捌
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今回そこそこ怪我をしてしまったので、ナオミちゃん達が向かった避難拠点とは別で、私は探偵社の皆がいる方に連れて行かれた。
勿論、待っていたのは与謝野さんである。
私は拘束された上で寝転がり、与謝野さんの治療を待つ。
こういうの何て云うんだっけ……あ、まな板の鯛だな。
私は死んだ目で虚空を見つめた。
「さあ、治療の時間だよ!」
与謝野さんが宣言した直後、晩香堂には私の悲鳴が響きわたった。
ベッドで生ける屍と化した私の所に、ふらりと乱歩さんがやって来た。
「やぁ、麟。気分はどう?」
「善さそうに見えるんですか?」
ニコニコと元気よく話しかけてくる乱歩さんに対して、私は引き釣った笑顔で返した。与謝野さんの治療の後、気分が善くなる事は絶対無い。
「まーまー、善かったじゃないか!麟のおかげで事務員二人も無傷だったし、国木田達も問題無しだ。」
バシバシと寝ている私のお腹を叩きながら、続ける乱歩さん。
一寸痛い……
でも、どうやら国木田さんと谷崎くんも無事な様だ。取り敢えず善かった…
「で、麟。一つ確認したいんだけど」
乱歩さんが叩いていた手を急に止めて、話を切り出す。急に真剣な口調になったため、私は少し驚いた。
「恐らく、組合にも麟が異能者ということは割れてしまっただろう。多分この調子なら、もっと広域に広まるのは確実だ。
それで、お前はどうする?」
乱歩さんが静かに私の意思を確認した。考えていなかった訳では無いが、いざ突きつけられるとどうするべきか困る。
探偵社に残るか、去るか。
今回の件で、私が異能者という事が外部に知れてしまった可能性は高い。しかも、私の異能は特務課の警戒管理レベルで云えばかなり高位だ。
加えて、このまま探偵社にいれば確実に異能の詳細を外部に暴露しなければならない時が来る。
暴露すれば、その分私の危険性は高まるし、異能を使わざるを得ない状況がより多くなる。今までの様な甘い事は云えなくなるだろう。
でも……それでも……
「危険なのは判ってます。何時か、探偵社に大きな障害になってしまうことも有り得ると思い…ます……。」
云いながら尻すぼみになっていく。探偵社への迷惑は避けたい。だが可能性として否定は出来ない。
「それでも……私は此処に居たいです。」
顔が上げられなくなって、俯いたまま答える。すると、乱歩さんはハア〜と長い溜息をついて
「莫迦だなぁ、そんな事はどうでも善いんだよ。」
そう云って乱歩さんは頭を掻く。