深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ拾玖
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太宰さんの鬼札……異能特務課を巻き込む作戦が失敗し、その会合中に襲撃され、太宰さんが腕を怪我して帰った日から一週間……
「敦くん、大丈夫ですかね?」
私は紙飛行機を折りながら、部屋の奥にいる乱歩さんに訊く。乱歩さんはスナック菓子を食べながら
「大丈夫でしょ。連中の狙いは敦とこの街だ。殺しはしないだろ。」
全く緊張感無く答えた。スナック菓子のゴミが床に散らばり始める。……後で掃除しないと。
どうやら、特務課との会合があった日、敦くんが組合に攫われた様だ。
とはいえ、組合の拠点となると救出は一寸難しい。
どうしたら善いものか……
机の前でぼんやりと考えていると、慌てた様子で太宰さんと国木田さんが部屋に入って来た。
「麟ちゃん、至急縄…いや、鎖を用意して!」
「え……?」
「麟、頼む!急げ!」
え……えぇ!?
なんだなんだと云って居るうちに、国木田さんが椅子に縛り付けられた。
それも鎖で完全に拘束して、指一本動かせない様にされた。
「……国木田さん、そういう趣味をお持ちで?」
「莫迦云うな!」
私のお巫山戯にも緊迫した面持ちで返された。なんでこんなに慌ててるんだろ……
私が不思議そうな顔のまま見ていると、国木田さんに向かって太宰さんが歩きながら説明する。
「Qの異能だ。」
バッとそう云いながら、太宰さんが国木田の首元の服をズラす。
「!」
国木田さんの首元には何かに掴まれた様な痣……久作という男の子から精神操作を受けた時、敦くんについていた物と同様の物だった。
「なっ…接触したんですか!?」
「否……そんな子供には会っていない。勿論、通り際にぶつかられたという記憶も無い。」
どういう事なのか……確か太宰さんの情報では、夢野久作の異能力『ドグラ・マグラ』は自身を傷付けた相手に対し発生する異能……
どうして、会っても居ない国木田さんに対して異能が発動した?
もし有り得るとするなら……何か間接的な方法で傷付けた、ということになる。
そんなの……それこそ別の異能でも使って遠隔攻撃しない限り……
でも、国木田さんの異能は……
そう考えを巡らせた時に、フッと思い中った人物がいた。
私とナオミちゃん達を襲ってきた組合の刺客の一人……
確か葡萄と自身を結合させる能力者……そして、結合した木々と感覚を共有する能力……
否、でもそれは自分とであって久作くんを繋ぐのは別問題の筈だ。
でも、もしそうなら木の根を踏んだだけで異能の受信者になる可能性が……それなら国木田に出た痣も説明がつく。
組合とポートマフィアが組んだ?
……それは出来れば考えたくないな。