深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ弐拾
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最悪だ……
奥の手まで使ってしまった以上、もう能力は使えない。異能による弊害で身体も完全に動かなくなっていた。
阿鼻叫喚の巷と化したヨコハマ…目の前にはそんな景色が広がっていて、流石に生きて帰れるか不安になる。
銃声がすぐ前の方で鳴り響き、男性っぽい叫び声が聞こえてくる。
銃声の主と思わしき目の前の黒服の男性が、次に私を狙って銃を構える。
……流石に死んだかも
しかし、銃声と同時に目の前に黒い人影が現れる。弾は確かに発射された筈だが、倒れているのは撃った男性の方だった。
「交通網を死守しろ!襲ってくる奴は撃て!
此の侭だとうちが商売する場所まで灰になっちまう!
首領の指示だ、死ぬ気で守れ!」
私の前にいつの間にか立っていた男性はそう大声で叫んだ。
私はゆっくりと顔を上げる。
真っ黒な帽子を被った赤毛の男性だった。首領って……ポートマフィア?
ん?ポートマフィア……帽子……赤毛……銃の効かない異能力……
!
ポートマフィアの中原中也。太宰さんから聞いた情報では、戦闘力はポートマフィアでも最高レベル……
「んぁ?一般人か……大丈夫か?」
足がぶつかった事で座り込んでいる私に気づいたらしい。くるっと後ろを振り返り、帽子を片手で押さえたまま訊いてきた。
「えっ、あ……はい。」
困惑したまま答える。しかし、下手に反応して目を付けられたら大分拙い。
……そのまま一般人のフリで逃げ切ろう。
「じゃあこんなトコでボサっとしてねェで早くこっから離れろ!死にたくねーならな!」
そう云って怒鳴られた。離れられるなら苦労して無いっての……
と、取り敢えず腰が抜けて立てないって事にしとくか?否、なんか余計面倒くさくなる可能性も……
「なっ!?お前は探偵社の……!」
すぐ横で女性の声。凄く聞き覚えのある声だった気がする。
横には金髪のサングラスをかけた女性。……確か……樋口さんだっけ?
何時しか敦くんを狙って探偵社に依頼人として来た人だ。
「これは拙い……」
私は引き攣った笑みを浮かべる。なんでよりにもよって
「探偵社!?」
中原…?さんがかなりの大声で叫んだ。目を丸くして一瞬仰け反る。
うわぁ……死亡フラグを次々に立てていく感じは止めて欲しい。本当に、切実に……
今年一番で泣きたくなった。