深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ弐拾壱
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敦くんの奮闘と太宰さんの異能のおかげで、街の壊滅は免れた。
私はと云うと、やっと今朝身体も自由に動かせる様になったので早速とばかりに紅茶を淹れて、配っている真っ最中だ。
本当に負担の大きい異能だなぁ……
カチャカチャと食器を運んでいると、ソファの方から変な声が聞こえてくる。
「はぁ〜〜〜〜遣る気が出ない」
見るとでろんと伸びた太宰さんがソファに寝転がっていた。
「朝から壊れた喇叭の様な声を出すな、太宰」
それをイラッとした様子で見ながら、国木田さんが怒鳴った。昨日の凹みモードからはもう立ち直ったらしい。
異能の影響で暫く大変だったからなぁ……
昨日の国木田さんを思い浮かべて苦笑した。
「私は今誰かと対話する気力も無いのだよ国…なんとか君。」
「不燃ゴミの日に出すぞ貴様」
太宰さんが国木田さんをおちょくるのはいつもの事なのだが……普段遣る気がない太宰さんに更に上があった事に私は少し驚いた。
でもまあ、面白いので対面側のソファに座って、紅茶を飲みながらコントの様な二人を見ることにする。
「あぁ……食事も面倒臭い。呼吸でお腹が膨れたらいいのに……」
太宰さんはソファから手を伸ばし、皆の朝食が入っているスーパーの袋からバナナを一本出して、そのままガジガジと齧り始めた。
「バナナの皮剥きすら面倒なら餓死してしまえ」
イライラが溜まってきた国木田さんが、黒いオーラの様なものを纏いながら云った。
「お前と敦の連携で街は壊滅を免れた!その翌日に何故そうなる!」
国木田さんが怒鳴る傍から、太宰さんは寝たまま牛乳を飲もうとして、辺りを牛乳で浸していた。
牛乳臭が凄いので止めて欲しいのだが……ついでにそのソファ洗うの誰だと思ってるんだ。
「それがねぇ……社長から次の仕事を頼まれちゃって……
あー枯木の様に唯寝ていたい」
「枯木なら可燃ゴミの日か……」
国木田さんの適切なツッコミに、私は静かに頷いた。ツッコミながら、ふっと何か気付いた様子の国木田さんが訊く。
「そう云えば、昨日社長と敦が話し込んでいたが、その件か?」
「そうだ」
急に声がして、見てみると社長がそこに立っていた。国木田さんの背筋が伸びる。
私もカップを皿に置いて、ソファから立ち上がった。
社長と太宰さんはそのまま話し始める。
「太宰、ポートマフィアとの密会の件は進んだか?」
ポートマフィアと密会?
社長から出た珍し過ぎる台詞に私は固まった。
「手は打っていますが……」
「ポートマフィアの首領は来ると思うか?」
「来るでしょう。社長を殺す絶好の好機ですから。」
「……構成員同士で血を流し合うよりは良い。」
その間国木田さんはというと、目を白黒させたまま、硬直して話し込む二人を見ていた。