深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ弐拾参
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「たっだいま〜!」

元気良く探偵社の扉を開いた乱歩さんが、扉から顔を覗かせる。

乱歩さんに『推理遊戯への誘い』と書かれた封書が組合から届き、乱歩さんと与謝野さんは二人で出掛けていた。
どうやら、その推理遊戯とやらは終わったようだ。

乱歩さんに続いて、与謝野さんも帰ってくる。少し疲れた様子でやれやれ、と椅子に座った。

乱歩さんはそのままスタスタと此方に歩いてきて、私の目の前の机にバンっと封筒を置く。……と云うか投げた、だなコレは。

私は乱歩さんを見上げながら

「何ですか、これ」

眉根を寄せ、乱歩さんに訊いた。乱歩さんはにっと笑って答える。

「組合の機密情報だ」


組合の……?

乱歩さんの言葉に私は、封筒を手に取り、サッと椅子から立ち上がる。

「……会議室に駄菓子を運んでおきます」

私は静かに云って、会議室の用意をする。それと同時に、太宰さんに連絡を入れた。どうしても、作戦立案にはこの人無しでは無理だ。

癪だけど……

釦を押して、太宰さんの電話にかける。もう前みたいに事務所の番号しか判らないなんてことの無いよう全員の番号は登録済みだ。

二回コール音が鳴って巫山戯た口調の太宰さんが出た。

『はぁ〜い、麟ちゃん。どうしたの?』

やっぱり切ってやろうかな……

はァと1回溜息をついて、出来るだけ真面目な声で応える。

「至急探偵社に戻って下さい。乱歩さんが組合の機密情報を手に入れました。」

電話先で太宰さんが一瞬黙る。そして、先刻までの巫山戯た口調は一変し

『判った。すぐに戻るよ』

太宰さんは真剣な声でそう云って、電話を切った。
もうすぐ帰って来るだろう。

直ぐに連絡が取れたのは幸運だった。また川にでも流れてたら繋がってなかっただろう。
昔話じゃないんだから、毎回川を流れるのは止めて欲しい。

「手伝いますよ」

私が乱歩さん用のお菓子を用意していると、谷崎くんがひょこっと出てくる。

「助かるよ〜、ありがと」

私は顔を緩めて、谷崎くんに幾つか持っていく予定だったお菓子を渡す。乱歩さんは一瞬で食い散らかすから……



二人で簡単に準備し、ある程度会議の用意が出来た頃、太宰さんが帰ってきた。帰るなり乱歩さんの居る奥の部屋に入っていく。

それを見計らって、私と谷崎くんは部屋を出た。あの二人で会話してると並の人間じゃ着いていけないだろうし、いても空気扱いされるのが目に見えてるからね。
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