深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ弍拾肆
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私は今ヨコハマの港へ足を向けていた。今、敦くんが白鯨へ潜入している。
作戦内容は敦くんの単身潜入による組合の作戦阻止且つ鏡花ちゃんの入社試験だ。
作戦については、敦くんが谷崎くんと出発した後太宰さんに聞いた。
最後は海との事なので、多分終わるのは此処でだろう……という事で、街の命運を掛けた作戦の結末を真っ先に見てやろうと特等席であろう港に行こうという好奇心からの行動だ。
街はいつも通りで、きっと誰一人として今日街が無くなるかも知れないだなんて思っちゃ居ないだろう。
街路樹の間を抜けて、港に差し掛かった時、目の端に見覚えのある影が映った。
黒帽子に赤みがかった髪……
ポートマフィア幹部、中原中也だ。
ここで会ったが百年目!
私は咄嗟に追い掛けた。今は一応停戦中……いきなり殺られることは無いだろうし、いざとなれば逃げる手段もある。
「中原さん!」
私は後ろから大きな声で叫ぶ。
「あぁ?」
いきなり呼び止めらた私を訝しんだのか、眉根を寄せて不機嫌を体現したかのような顔で振り返る。
あ、やっぱし怖いや。
前回Qの事件があった時に助けて貰ったので、一応お礼だけでも云っておこうという気持ちだったのだが、流石ポートマフィアと云うべきか凄く怖い。
百年目と云っても何も戦いを挑みに来た訳じゃないんです許して下さいゴメンナサイ!
脳内で云い訳しながらも、何とか落ち着く。表情に焦った顔が出てないか少し心配だ。
取り敢えず、気を取り直して頭を下げた。
「この前はたちゅけていてゃだきありがとうございました!」
……メッチャ噛んだ。
なんか色んな意味で死にそうだ。
恥ずかしさと恐怖で顔を上げられない。
「あ?」
目の前の中原さんは、さっきの警戒心が目立った声と云うより動揺した時の声を上げた。
私は恐る恐る顔を上げる。ただ、あまり判っていなさそうな彼の様子に、ピンと思い至る。
あ、顔憶えられてないやつだコレ。
「あ、の、この前Qの異能が街を襲った時に……助けていただいて……」
私は少しオドオドしたまま答える。すると、中原さんは納得したらしく表情が少しだけ緩んだ。
「あン時の探偵社か。……否、別に大した事はしてねぇし…」
帽子を片手で押さえながら、少し目線を逸らしながらそう云う。
もしかして…照れてる……のかな?
そんな中原さんの様子を見て、少し心に余裕ができる。
「いえ…あの時助けて貰って無ければ、私は死んでたかも知れません。しかも、此方の作戦にも協力していただきまして…」
「そういう云い方すんじゃねぇ!
……なんか彼奴の作戦に乗ったみたいで胸糞悪くなる。」
会話の途中で苦虫を噛み潰したような表情で遮った。