深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ弍拾陸
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クラッカーを持ったまま、探偵社の入口前で待機する。今日は、鏡花ちゃんの入社宴会(パーティー)なのだ。

カチャッとドアが開き、鏡花ちゃんが入って来た。乱歩さんが掛け声をかける。

「せ〜っの!」

「「「「「「鏡花ちゃん!入社おめでとう!!」」」」」」

皆で御祝いをしながら、パンッと景気良くクラッカーを鳴らした。
鏡花ちゃんはキラキラした目で、可愛らしく微笑んだ。

それぞれ飲み物をとって乾杯する。あ、賢治くんだけはトマトだったけど。

まあ味があっていいだろう。机にはご馳走が並び、国木田は端の方で電卓を叩いて溜息をついていた。やっぱり湯豆腐とかがデカかったね。

私は笑って其れを見つめる。そんな事を考えつつ、ピザの一枚をパクッと頬張った。

横目で観察していると、国木田さんが敦くんと鏡花ちゃんの方に歩いて行く。

私は一寸面白そうなんて思いつつ、じぃっと様子を見守る。

「敦、その……怪我は如何だ」

「ええ、お陰様で」

敦くんがそう返すと、国木田さんは少し照れながら言葉を紡ぐ。

「何だ……今回お前達の作戦行動で街は壊滅を免れた。社の先輩として一言云うべきだろうと思ってな。」

お!国木田さんがデレた

私はニヤニヤしたまま様子を見守る。だが、期待は裏切られ国木田さんはガシッと敦くんと鏡花ちゃんの肩を掴む。

「報告書は明日迄だぞ」

あんた鬼か……

私はアチャーと頭を抱える。素直じゃないんだから本当に。
そのまま敦くん達に凄い勢いで諄々と訓示を垂れる。

「抑も探偵社という集団組織に於いて単独作戦は例外なのだ。今回の成功を以降に活かすなとは云わんが社の基本動作は疎かにするな。鏡花も同じだ。探偵社員として自覚を持ち決して恥ずべき行いを後に残さぬ様ーーー」

そこで与謝野さんがぐいっと国木田の首に腕を引っ掛けて後ろに引っ張った。

「全くだねぇ国木田。処で何奴も酒付き合いが悪くて困ってンだ。一寸付き合いなよ。」

「え"!」

その瞬間私はブッと噴き出した。俺も其れ程には……と云う国木田さんは与謝野さんによってズルズルと後ろに引き摺られていく。

与謝野さんなりの素直じゃない国木田さんへの助け舟だ。ポソッと何か耳打ちしているのが見えた。

まあ、何を云われたかは察しがつくけど。

グッと一瞬覚悟を決めたような顔をして、国木田さんは敦くんと鏡花ちゃんに叫ぶ。

「二人とも!善くやったな!」

私は其れを見ながらまた緩む口元を隠しつつ、唐揚げを口に放り込んだ。

……ん?そう云えば太宰さんは?

こういうのに一番に飛びつきそうな人が居ない。

まぁ……いいか。


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