深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ弍拾捌
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今日は久しぶりに休みである。いや、正確には休日では無いのだが、仮病で休む事にした。
でも、出社しても何もしないよりは幾らかマシだと思う。ちゃんと昨日の内に仕事大体終わらせてるし。皆が燃え尽き症候群の間もちゃんと仕事したし。
カフェでケーキを食べて、可愛い雑貨を買って……偶には女の子らしい事もしないと駄目になる気がする。
いっぱい遊んだな〜
今晩のおかずはどうしようか……
そんな事を思いつつ帰路についた。海沿いの道に差し掛かった時、見慣れた影がベンチに座って居るのが見えた。敦くんと太宰さんだ。隣合って座っている。
私は極力気配を消しつつ後ろの方に近寄った。太宰は立ち上がって、去り際に何か敦くんに云うと、そのまま踵を返して帰って行った。私とは反対方向なのでバレなかった様だ。
敦は暫く固まっていたが、徐々に表情を歪ませ、両手で顔を覆う。
肩を震わせて居るようにも見えるので、十中八九泣いているようだ。
普通に考えると、太宰さんが何かの云って泣かした?
いや、多分そうじゃないな。
私は以前、敦くんが泣いていた時の事を思い出して脳内で自分の考えを否定する。
数分間待ってから私は静かに敦くんに向かって歩いて行った。
敦くんの前に立って、俯いて泣く敦くんの肩をポンっと一回叩く。
すると、敦くんは涙で濡れた顔をゆっくり上げたが、私の姿を見て後ろに少し仰け反る。
「〜っ!……麟さん。」
私は鞄から手巾とポケットティッシュを重ねて手渡す。
「此れあげるね。その代わり、今日私がサボったのは内緒でお願い」
少しだけ笑みを浮かべつつ、半ば押し付ける様にして渡した。
じゃ、とそさくさ其の場を離れる。
いや、意味無い行動だと自分でも思うけど、何かそのまま放置ってのは厭だし……
却説、帰ろっか。
公園を出て歩き出す。
「やあ」
……動き全部バレてたのかな。何時から居た……?
多分最初っから覗いてたな此の人。
後ろを振り返ると、予想通りの人物がにこやかに立っていた。私はジト目で声を掛ける。
「太宰さん、何してるんですか。」
「それは此方の台詞じゃないかな?風邪引いて寝込んでるって聴いたけど?」
食えない笑みを浮かべ、痛い処を突く太宰さん。そう云われてしまうと何も云えない。云い訳をしたいとこだが、左手に下げた紙袋が其れを許さない。
口篭った私にやれやれ、首を振りながらと太宰さんが近付いて来る。
そして、にっこり笑って目の前で少ししゃがんで私と目線を合わせた。
「却説、麟ちゃん?取引と行こうか。」
……厭な予感しかしない……