重き流れのなかに [文スト]
□夏の夜
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暑い……
外はジリジリ太陽が照りつけ、蝉達があちこちで鳴き始めていた。梅雨が開けて2日目の筈だが、既に夏本番になってきている。
探偵社は節電という事で、ただいま窓を開け、扇風機を付けて換気をしている。死にそうな訳でもないが、薄ら汗ばんでくる。氷使いの異能力者が本気で欲しいと思った。
そして、こんな状況で耐えられる訳がなく乱歩さんが騒ぎ出す。
「暑い!もぉ限界だ!僕うずまきに行ってかき氷食べてくる!敦と賢治くんもついてこい!」
そう云って乱歩さんは、困惑気味の敦くんと嬉しそうな賢治くんを連れてバタバタと出かけてしまった。
探偵社がある建物の1階にある喫茶うずまき。
完全に探偵社の休憩所になっちゃってるなぁ…
「あーあ…。相変わらずですねぇ」
私は苦笑しながらそれを見届けた。
「はぁ…」
其を見ながら国木田さんは眼鏡を指先で押さえ、深ぁい溜め息をついた。
「まあまあ、乱歩さんだからねぇ」
与謝野さんが面白そうに後ろで笑っていた。残念なことに探偵社では、その一言で大体のことはしょうがない≠ナ済まされて仕舞うのだ。
「あはは…」
もう苦笑するしかない。
何か話題を変えてしまおうと辺りを見渡すと、何かチラシらしきものをナオミちゃんが見ていた。
「あれ?それは…?」
「あぁ。明日、海岸の方で花火大会があるんです。兄様と行くんですよ」
私が訊くとそれはもう楽しそうに教えてくれた。谷崎くんも嬉しそうにそうなんですと同意した。
「へぇ!花火大会かぁ…。」
……
少し考えて
「これ、みんなで行きませんか?
ね?国木田さん」
私はちょっと上目遣いに国木田さんを見た。
「……お前…今何考えてた。」
「みんなで行ったほうが楽しいじゃないですか。多分乱歩さん達も行きたいって云うと思いますよ?
折角ですし、探偵社全員で行きましょう!」
ジロっと私の考えてることを読んだみたいに見てくる国木田さんを無視して、聞こえなかったように笑顔で応えた。
「いーじゃないか国木田くん。偶には骨休めも必要だよ?」
いつの間にかすぐ後ろに立っていた太宰さんが同意した。恐らく、ただ単に楽しみたいだけだろう。
「お前まで何を…」
「花火は健康的にも役立つんだよ?花火の光を下から見ることで、目と肩が刺激されて日頃のストレスを落とす作用があってね…」
言い返そうとする国木田さんに太宰さんが訳の判らない理屈を教え込む。
多分、今ここにいる国木田さん以外は気づいてるだろう。
絶対に嘘だ。
だが、この人は
「そうなのか!」
「ほらほら、メモメモ〜」
慌てて国木田さんは手帳に嘘情報を書き込んだ。太宰さん国木田さんを玩具に楽しんでるな……
でもまあ、この流れなら……
「……判った。社長に掛け合おう」
やったぁ!