重き流れのなかに [文スト]
□動物恐慌
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如何してこうなったんだ……?
私は目の前の惨状を見ながら一人頭を抱えた。
事の発端は数時間前。気持ちの善い晴れ晴れとした朝に舞い込んできた。
「護衛依頼…ですか?」
「嗚呼、政府の要人なのだが遊説の護衛につけとの依頼だ」
国木田さんと敦くんが事務机で話している。国木田さんがはぁと溜め息をついて説明した。私は先程淹れたばかりの緑茶を国木田さんと対面の敦くんの席に置く。
「お忙しそうですねぇ」
私は苦笑しつつ自分の席に戻った。
「少し面倒な相手だからな…」
私は国木田さんの机に散らばる書類を覗き込む。慥かに一寸面倒な政治団体の名が書かれていた。これは暫く帰って来れなさそうだ。
「担当は何方が?」
「俺と敦、賢治の三人だ」
中々豪華な面子が揃ったな……
探偵社の中でも戦闘専門の人員ばかりだ。私は口元に手を中てて考える素振りをしつつ尋ねた。
「向こうの要望ですか?」
「嗚呼」
ですよね
そうして私は少ししんどそうな国木田さん、一寸ビビり気味の敦くん、いつも通り笑顔の賢治くんの3人を送り出した。
これが数時間前の出来事だ。
此処で注目して欲しいのだが、私は3“人”を送り出したのだ。
「にゃ〜」
「ワンッワンッ」
「モー」
……3“匹”だっけ?いや…2匹と1頭?
国木田さんの定時報告がないので、念の為様子を確認しに来たら真逆のこの始末だ。
国木田さんはクソが付く程真面目なため、調査業務等が遅れる場合すぐに一報が入る。それを社長が可笑しいと判断し、此方の連絡にも応じない為何故か私が派遣された。すると何と云う事だろうか、遊説の場の一つが動物園と化していた。
何とか無事だった人に事情を聴くと、突然ナイフを持った青年が乱入し、賢治くんと国木田さんがメインで捕らえた。
然し、捕らえた途端国木田さんと賢治くんがそれぞれ犬と牛の姿に変わってしまった。敦くんも慌てつつも犯人を追うが、やはり触れてしまった途端猫になってしまったと。攪乱の為か、周囲に集まっていた何人かも動物の姿に変えられてしまった様だ。
どうやら、触れると動物にされてしまう異能らしい……
取り敢えず他の動物にされてしまった人は一旦相手方に任せ、探偵社のメンバーを回収する。ただ、本人達よりも散乱した服や荷物の回収が一番しんどかった気がする。