深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ壱
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その日を最後に、私は暫く全部のバイトを休んだ。結局専門学校に進学することにしたが、仮にも高校生。きちんと勉強もして置かないと専門学校すら進学が危うい。
「麟、最近バイトして無いんだね〜」
「へぇ〜あのバイト狂いの麟がねぇ〜」
問題集を解いているとニヤニヤと友人二人が休み時間なってすぐ私の机に集まってきた。
「バイト狂いっていうのはちょっと失礼だなぁ。流石に次のテストでやらかしたら進学出来なくなっちゃうから仕方なくだよ」
私は溜め息気味に云い返した。私だって勉強は大嫌いだが、あの場所に縋り付こうと思えば、最低限の教養は必須だ。
福沢さんとの約束でもある。
【高校では勉学に励み、知恵を付けまた探偵社に帰って来い。進学は麟の望む様にせよ。
後悔はせぬ様に励み給え】
……だそうだ。
相変わらず硬っ苦しい云い方は変わらないが、私の事は考えてくれているらしい事は佳く判った。
私は事務員として、誰にも負けない職員になる。それが、能力すら自分の口から云えない私のせめてもの償いだった。
私の能力はちょっと悪用の幅が広すぎる。殆ど憶えていない両親の唯一憶えている台詞……
貴女の能力は人に見せちゃいけない。使い方によってはあまりに危険すぎる。だから、貴女が本当に大切な物が判る位大きくなるまで、その力は使わないで……
両親の云っていた物は未だに良く判らない。ただ、悪用されて危険な事はもう流石に想像が付いていた。世界単位で影響する異能力なんて、そう多くは無い事くらい、異能者集団である武装探偵社にいる身なら理解するのはそう難しくない。
この力に頼らず、人に知られずに探偵社員として戻る。彼処はもう私には家も同然だ。
その為に……
私はビジネス系の技能を教えてくれる東京の専門学校に進学した。二年間びっちり叩き込んでくれる場所を選んだ為、探偵社にはその間戻る暇もなかった程だ。
辛く厳しかった二年間の修業期間を経て、卒業後暫くした後に私は無事に探偵社に正式な事務員として戻ることになった。
福沢さんから探偵社の情報はちょこちょこ連絡を貰っていたが、それでもやっと帰って皆や新しい新人達ともきちんと会えるとなると自然と浮き足立つ。
だからこの時は、久しぶりに戻った探偵社で災厄の元凶と再開する羽目に成るなんて想像もしていなかった。