深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ玖
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上機嫌で帰ってきた乱歩さん。

「浮かれてる……」

私がボソッと溜息混じりに漏らすと

「乱歩さんが一番浮かれてるから」

谷崎くんが敦くんに説明した。奥の方で乱歩さんが鏡花ちゃんに説明している。

「これ先刻(さっき)話した練ると色が変わるお菓子!

練っていいよ!」

乱歩さんはお菓子をハイテンションで鏡花ちゃんに渡した。

鏡花ちゃんは目をキラキラさせて、色が変わるお菓子を混ぜた。

「小学生の……兄妹?」

楽しそうな乱歩さんと鏡花ちゃんに呆れた敦くんの的確なツッコミが入った。

にしても…乱歩さんがお菓子をあげるなんて……珍しい事もあるもんだな。成長したということなのか、鏡花ちゃんが可愛い過ぎたのか…

確か、私が此処に来てすぐ位の時

“佳いじゃないですか、一個くらい”

“駄目に決まってるでしょ!僕のお菓子なんだから麟にあげるお菓子なんて無い!”

“乱歩さんの莫迦!!”

“ふーっんだ!”

あの時乱歩さん、確か20歳だった筈だけど……中学生相手に大人気無い……。

そんな記憶しかないので、鏡花ちゃんにお菓子をあげてるのはかなり吃驚(びっくり)だ。

「でも食べるのはぼ〜く!」

パクッと鏡花ちゃんが練り終わったお菓子は乱歩さんが食べてしまった。

あ……やっぱし乱歩さんだったわ。全然成長なんてしてなかった。

「大人気ない……」

「谷崎くん、今更だよ。」

私は諦めた顔のまま、谷崎くんにそっと云った。

「…でも、彼女を探偵社に呼んだのは誰なんですか?」

ふと思い出したように敦くんが云うと、丁度後ろから低い声がした。

「私だ」

「社長?」

社長は驚く敦くんに構わず、国木田さんに問いかけた。

「警察の動向は?」

「ポートマフィアの隠蔽の甲斐あってか身元までは割れていませんが…」

「指名手配は時間の問題か…」

確かに身元がいつ割れても不思議ではない。幾らポートマフィアとはいえ、そこまで完全に過去を取っ払う力は無いはず……

……アレ?
そういえば、どうして太宰さんのデータは漏れてなかったんだろ。

当時の私が何度か時間を止めながら、ポートマフィアの情報集めをしていた時、太宰さんが幹部だという事が突き止められる程度には情報は出ていた。

それなのに、どうして探偵社ですら彼の過去を知らなかったのだろうか。

情報操作…?いやでもそんな大規模な……

私が一人で悶々と考え込んでいたら、社長の声が重く響いた。

「採用」

「「「「「え!?」」」」」


なんだか判らないがほぼ全員が驚いた声をあげる。
話を聴いていなかった私は少し遅れて

「…………へ?」

と間の抜けた声を出してしまった。
数分後、鏡花ちゃんが探偵社に採用された事が敦くんから伝えられた。
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