深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ拾
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敦くんは暫く食い下がっていたが、太宰さんに言いくるめられてしまっていた。
しかも、あの顔は遊んでる…絶対敦くんで遊んでる。
はァと溜め息をついて、仕事に意識を戻そうとした。
「敦で遊んどる暇があったら、ポートマフィアに囚われた件の報告書を早く出せ」
国木田さんが太宰さんに云う。
「そうだ好い事考えた!国木田くんじゃんけんしない?」
「自分で書け」
「んじゃあ麟ちゃん、じゃんk」「面倒なので厭です」
私と国木田さんへの押し付けは諦めたのか、今度は敦くんの方に向き直る。
「敦くん、今日は君に報告書の書き方を教えようと思う」
「こ……この流れでですか?」
厭そうな顔の敦くんだったが、次の一言で表情が変わった。
「君に懸賞金をかけた黒幕の話でもかい?」
!
……嗚呼、納得した。捕まった理由はそれか。
「判ったんですか!?」
驚く敦くんに太宰さんはUSBメモリを見せながら云う。
「ポートマフィアの通信記録に依ると、出資者は組合と呼ばれる北米異能者集団の団長だ」
それを訝しむ様に国木田さんが云った。
「組合は都市伝説の類だぞ?
構成員は政財界や軍閥の要職を担う一方で、裏では膨大な資金力と異能力で数多の謀を底巧む秘密結社一一一
まるで三文小説の悪玉だ。
そんな連中がなんで敦を…?」
国木田さん、解説ありがとうございます。
私も組合なんて知らなかったな。
国木田さんの言う通り何故敦くんなんだろ?
虎の異能力はそんなに貴重なんだろうか?70億もかける程?
「直接訊くしかないね。逢うのは難しいだろうけど巧く相手の裏をかけば一一」
その時、ババババッとヘリの音が鳴り響き慌てた谷崎さんが駆け込んできた。
「た、大変です!」
そのまま慌てて谷崎さん、太宰さん、国木田さん、敦くん、鏡花ちゃんの順で事務所の外に駆け出した。
私はその後をついて行く。
屋上に上がると、道路のど真ん中にヘリが止まっており、渋滞の原因になっていた。
何故空港を経由して来なかったのか意味不明だ。
「…先手を取られたね」
太宰さんが珍しく真面目な声で云った。
ヘリからは赤毛の三つ編みの少女、貴族の様な服装の細身の男性、そして自信に満ち溢れた様な笑を浮かべた金髪の男性がアタッシュケースを肩に引っ掛けて出てくる。
癪に障る登場の仕方だな。
一発撃ち込んでやろうかと柄にもなく考える程度には、厭な奴ら感を醸し出していた。
恐らく、真ん中に立つ金髪の男性がその団長なのだろう。
私は他の社員より少し早めに探偵社に戻ると
一コンコン
「失礼します、社長。」
福沢さんの元へ連絡に行った。