深夜の酒宴 [文スト]

□其ノ拾漆
2ページ/4ページ

しかし、どうも様子がおかしい。

久作君は腕を出す。包帯に剃刀が巻かれていて、見るからに痛そうだ。

久作君は不気味に歌う。

「籠のなぁかのとぉりぃは〜
いついつで遣ぁる〜

後ろの正面だぁれ?」

久作君が持っていた少し不気味な人形が、けたたましく笑いだした。

ガバッと敦君が私達を庇う体制に入った。

そして、久作君は持っている人形がビリっと破いた時だった。

ガクン

敦君が何か譫言の様に話しだす。残念ながら何を云ってるかまでは聞き取れない。

「!
ナオミちゃん、春野さん!
此処から今すぐ離れて!」

敦君の様子がおかしい。あの久作君が何かやったなら……

真逆…精神操作の異能!?

敦君が急に私達に向かって襲いかかってくる。
真っ先に春野さんの方に、手を伸ばす敦君。私が何とか全力で春野さんに体当たりして回避した。

「敦さん!?」

ナオミちゃんが叫ぶ。

考えてる時間はあまり無さそうだ。

「ナオミちゃん、春野さんを連れて敦君の視界に入らない所に!」

私は敦君に向き直って、後ろに居るナオミちゃんに叫ぶ。

敦君は異能を使って此方に襲いかかってくる。

「…異能力『永遠なる序章』!」

私も異能を展開した。

まだ、休憩時間中(インターバル)で完全では無いため、時間は止まらず自分以外の物がゆっくり進む。

そのまま、社長直伝の技で敦君を転がした。

しかし、二分の一でもやはり敦君の動きは速すぎる。しかも、私のコレは時間制限付きだ。何時までもつか……

ナオミちゃん達に敦君の視界に入ら無い所まで逃げて貰い、私は敦君の攻撃を何とか回避しつつどう動くべきか迷う。

「お姉さん
早く何とかしないと殺されちゃうよ?♪」

久作君が駅備え付けの椅子に座って楽しそうにその様子を見ている。
久作君の異能を解除しなくては……

そう考えるが、何せ敦君を相手にしながら久作君を倒す何ていくら何でも難し過ぎる。

手段は選んでられない!

私は鞄の中の電撃針器(スタンガン)を取り出す。

敦君ご免!!

そう思いながら突き付けたが、敦君の動きの方が早かった。
虎化した腕で、真横に吹っ飛ばされる。

「椎名さん!」

呆気なく敦君に掴まって、首に手をかけられる。

「逃げ…て……」

私はナオミちゃん達に何とか伝える。そして敦君の目を見た。目からは血だろうか…真っ赤な涙が線になっている。

拙いな……コレは……
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ