深夜の酒宴 [文スト]
□其ノ拾捌
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「え……?」
乱歩さんが云った事が佳く理解出来ずに、聞き返す。私の必死の思いを、どうでもいいで一刀両断されたので咄嗟に頭が働かない。
「だーかーらー、組合に狙われる可能性出てきたから、僕達と一緒に居た方が良いかを訊いてるんだよ!」
……ぇ?………あ。
漸く、話の意図を理解して寧ろ自分の必死さに赤面した。このまま布団の中に消えたい……
そう思いながら、毛布の中に半分顔を埋めた。
「……恥ずかし過ぎて死にそうなんですが…。
私の決心はなんだったんですか……」
私は消え入りそうな声で乱歩さんに云う。勿論、頭はまだ布団に沈んだままである。
「ハァ…大体、麟が探偵社を出て行きたく無いって云うことぐらい誰でも予想できるよ。
そんな無駄な事訊いてどうするのさ。」
乱歩さんが溜息を吐きながらそう云う。本当に呆れ返っているのが口調から容易く読み取れた。
……何も云えない。
「それで、どうすンの?」
乱歩さんが沈む私を無視したまま先を促す。
相変わらずマイペースだなぁ…
選択肢は春野さん、ナオミちゃんと共に避難。若しくは探偵社で大人しくする。
そんなの答えなんて決まってる。
「一緒に居させて下さい。
……なんとか大人しくしてますから。」
私は乱歩さんを真っ直ぐ見つめてそう云った。乱歩さんはにぃっと笑みを深くして
「ま、そう云うと思ったよ。」
と云いながら笑いだした。
「一応社長に伝えとくから、約束忘れない様にね。」
乱歩さんはそう云って部屋を出て行った。あれ……?約束?
あ、大人しくしてるって事か。
そう気付いて一人で納得していると、部屋に賢治くんが入って来た。
「あれ?どうしたの、賢治くん。」
私がひらひらと手を振って賢治くんを迎えた。
「麟さん、お元気そうで善かったです。」
そう云ってニコニコと笑う賢治くん。寧ろ、私は此処に来てから賢治くんが怒っている所を見たことが無い。
怪力の異能力者だが、基本穏やかな性格で仕事も笑顔のままやってしまう為か、あまり異能を使っているイメージは無い。
「ありがとう。なにか用事?」
私は賢治くんに笑いかけながら、要件を訊く。賢治くんはうーんと少し困った笑顔で私の目の前までやって来た。
「乱歩さんから御遣い頼まれてしまったので……」
申し訳なさそうに笑う賢治くんだったが、それを見て私は何だか様子がおかしい事を察した。
ヤバい…逃げなきゃ!
そう思ったのも束の間、賢治くんに綱を掛けられて、呆気なく捕まる。
気がつくと既に手足をしっかり拘束されていた。
「け…賢治くん?これは一体?」
私はギギギっと首を回して賢治くんの方を見る。すると、相変わらず困った様に笑う賢治くんが立っている。
「すみません。乱歩さんから“大人しくするって約束だから適当に縛っといて”との事で……万が一また無茶されると面倒臭いと……」
そう云う賢治くんに私は事情を察した。
よぉく判った
結論はただ一つ。
あの狐目野郎!!