短編集(2015)
□なんかもう理不尽
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小学校に入って直ぐ、俺は両親を亡くし、施設に預けられた。子供達の問題には一切、手を出さない施設の人達は俺が虐められていた事を見て見ぬふり。
学校側も同じだった。高校を卒業するまで、虐められ続け、どうでもよくなっていた俺は死を決意した。推薦と奨学金で入った大学が馬鹿馬鹿しくなり、数日で三階の窓から飛び降りた。目が覚めると天国か、はたまた地獄か。そんなことはなく病院のベッドの上。あっけなく自殺に失敗した。警察やカウンセラーやらにしつこく色々言われたが、心に響く言葉は一つもなく、たいしたアドバイスも貰えないまま大学をやめた。
底辺の底辺だと思っていた警備員の仕事で馬鹿みたいに働き、一年で貯めた百五十万円で大嫌いな地元を後にした。
奨学金の返済や、税金関係の支払い、住民票、そんなものはどうでもよく、一台の中古バイクを購入し、旅を始めた。
どんどんと減っていくお金の中、一点の光が見えた。それは反対車線を走る一台のバイク。お構いなしのスピードで、俺のバイクより大きかったそのバイクは俺の身体を思いっきり吹き飛ばした。
二度目の病院のベッド。あのときとは違い、隣には一人の女性が座っていた。はっきりとしない視界の中、なんとなく若そうだが。目を冷ました事に気づいた彼女は、「 先生を呼んできますね」と呟き、「私は帰りますけど、また明日夜に来ますから!」と言い残して、病室を後にした。
一点の光は彼女のことか。
翌日―――もう面会時間は終わる。
「看護師さん、昨日の女性の方、今日はみえましたか?」と問ってみた。看護師は「今日は来てないですね……来たらお伝えしますから」と元気付けるように言い残して病室を後にした。
あれから二週間、待てど待てども彼女が来る事はなく、退院の日を迎えた。
当然に見送られる事もなく帰路をたとうとして、正門に差し掛かったとき、「退院されたんですか!? すみません。しばらく行けなくって」
彼女だった。
大きな物音がした。目の前は一変し、大惨事となっていた。塀にトラックが突っ込んだ。彼女の姿はない。大きく唾を飲んだ。
警察よりも先に病院に知らせた。トラックよりも彼女が心配だった。しかし彼女は即死だった。
理不尽じゃないか。こんな世の中。良いことなんて一つもなく、生きていることの意味を探しても見つからない。
三度目の病院送りはごめんだった。
高層マンション。それなら、死ねるだろう。