短編集(2015)
□北風と太陽 南風と雨雲
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太陽は言いました。
「あの女性の服を脱がせるのはどっちが先か僕と勝負しよう」
太陽はとある町にいた一人の女性を指しました。
北風は答えました。
「そんなのエッチだわ。あの旅人が、ナイスバディーだからって」
北風は太陽の事が少し気になっていました。そんな矢先にエッチな発言をされては怒るのも無理がありません。
太陽は慌てて言い返しました。
「いやいやそういうことじゃなくって」
北風は呆れてため息をつきました。あまりにも大きなため息だったので一瞬突風が吹き荒れました。空が少しずつ灰色になってきて、雨雲がやって来ました。太陽は少しずつ雨雲に隠れていきます。
やって来た雨雲が言いました。
「太陽くんどうしたんだい?」
太陽は慌てて言いました。
「何もないって。ちょっと北風ちゃんに怒られただけ……てか、ちょっちょっちょっ、雨雲くん! 帰ってくれよ!」
何故なら雨雲は雨を降らせます。あの旅人の服が濡れてしまい、セクシーになってしまうからです。
「今更無理だって。風でも吹かなきゃ」
太陽は雨雲が邪魔をして旅人を上手く見ることが出来ません。しかし隙間から見える旅人を見て鼻の下がのびてきました。
「ちょっと雨雲も太陽も北風ちゃんに何してんの!」
そんな時、北風のいる方角とは反対側から南風がやって来ました。
「誤解だって南風ちゃん……北風ちゃんに呼ばれて来てみたら、太陽くんが落ち込んでいて、よくわからないんだよ」
「雨雲の説明もよくわからないわよ」
見てみると雨雲が旅人を濡らし、そのせいか太陽が鼻の下をのばし、その光景に北風が呆れています。
「大丈夫よ。北風ちゃん。私が旅人の服をあたためてあげるから。そのあとに雨雲も太陽もお仕置きよ」
南風は旅人に向けて必死にあたたかい風をおくります。しかし雨雲の雨は止むことなく降り続きます。乾かす事が出来ないまま時間は流れました。雨雲は南風ちゃんにお願いをしました。
「南風ちゃん。おれを飛ばしてくれよ」
「無理よ。いつでも動けるわけじゃないんだから」
北風は太陽をチラッと見ました。まだまだ鼻の下を伸ばしている太陽を見て更に呆れ、大きなため息をつきました。そのせいか突風が発生し、雨雲を吹き飛ばしてしまいました。おまけに南風も吹き飛ばしてしまいました。
雨雲と南風は本当に何をしに来たのかわかりませんでした。
北風は太陽に聞きました。
「太陽くんは私じゃダメなの?」
太陽は答えました。
「ダメじゃないよ。北風ちゃんの事は大好きだよ」
北風は更に聞きました。
「さっきの件はどう言い訳するつもりなの?」
太陽は出す言葉がありませんでした。
「いや……あの、それは―――」