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□He is.
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 キーくんはよく「顔を服で誤魔化している」と言ったり、コンプレックスだという目を強調させるような濃いメイクを好む。好きなブランドの服で着飾る姿も、メイクで変幻自在になるのも悪いとは思わない。好きなことを好きなようにしているキーくんはきらきらと輝いていて、とても綺麗で見とれてしまう。

 だけれど、お風呂あがりや寝起きの、なにも纏っていないありのままの君が好きだとも思う。ファッションリーダーだラグジュアリーブランドが似合うだの言われている陰で、そのままの君が好きだという声があることを知ってる?俺だけじゃない、君以外の皆はもうわかっているんだよ。それなのに、どうして君だけがわからない?

 キーくんは自分がどんなに美しいのか、全然わかっていない。でもそんな君だから、殊更に輝いて、周りを一切寄せ付けないほど唯一無二の存在になる。誰にとっても、俺にとっても。

「ごめん、嫌な思いさせたね」

 誰よりも綺麗な、君のつるんとした額にキスを落とせば、潤んだ瞳を震わせながら自信なさげに顔をあげる。他の人の目なんか気にしないで、目の前の俺だけ見つめてよ。頑固な君に理解させるのは至難の業だけど、その分俺が君に全身全霊で伝えてあげる。疑う余地もなく自惚れてほしい。


 ごめん、ともう一度小さく謝る。腕に添えていた手をキーくんの頬に滑らせれば、さっきまでの悲しげな瞳はどこかに消えて、にぱーっ、と口角をあげた。

「僕、新しいジャケットが欲しいんだよねえ」

 悪いと思ってるなら買ってくれるよね?なんて、可愛く、わざとらしく”おねだり”する。引っかかった!とでも言わんばかりの切り替えの速さに、さっきまでの振る舞いがすべてキーくんの計算のうちだったことに気づく。

 しおらしく俯いたかと思えば、小悪魔みたいに笑う。ころころと変わる態度と表情にこんなにも惹かれてしまう。


 俺の負けでいいよ。だからさ、


「キーくん、出掛けるのやめよっか」
「えっ」

 不安げに君の瞳が揺れる。おしゃべりなその唇より饒舌に、真っ黒に潤んだ瞳が「怒らせちゃった?」と問いかける。上がっていた口角が徐々に下がっていく。


 ああ、かわいい。


「出掛けるよりも、キボマを堪能したいなって」

 舌舐めずりをして目を細めれば、キボマがごくりと喉を鳴らした。ぼみ、俺のこういう表情好きだよね。

 呼び方を変えるのは、二人の時間が始まるとき。二人の関係が変わるとき。突如切り替わった空気に耳鳴りがする。


「ねえ、キボマ」


 キボマは綺麗だよ。俺が出会ってきたなかで、これから出会うなかで、誰よりも綺麗だ。

 ちょっと小さめで涼やかな一重の目も、眉尻がすこし欠けた濃い眉毛も、ツンと上向いた薄い唇も、白く透き通った陶磁のような肌も、出会った時から俺の視線を捕らえて離さない、真っ黒で凛とした瞳も。


「俺は、そういうのが好き」


 いつかこんな曲を作ろう、と頭の片隅にメモを書き置いて、柔らかなベッドにゆっくりと君を押し倒した。






君に認めさせる為の曲


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