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□Love me tender
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Love me tender



「それで、ヒョンはどっちがいいの?」

「へ?なにが?」

「だから、挿れるのと、挿れられるの、どっちがいいかって聞いてるの」


 ぽかん、という擬音をそのまま表したような顔。大きな二重の目をさらに大きく見開く。カートゥーンアニメだったら目玉が飛び出してるんだろうな。

「あの、あのね、ぼみ、ええと」

 普段はうるさいくらいに饒舌な口が、いまは吃るような言葉しか発せられない様子から、答えを察する。──この人、自分が挿れられる側になるなんて微塵も考えてなかったんだろうな。なんとなくそうだろうと思っていた節もあるので、大して驚きはない。それに、そうであってほしいと少なからず期待していた自分もいたのは教えてやらない。

「ヒョン、どうしたい?」

 ゆっくりと、はっきりと、答えを促す。怖がらないで、望んで。ヒョンの答えと僕の答えはきっと同じだよ。この想いが伝わるように、震える手を重ねて見つめ返す。ヒョンの唇がわななく。


「……抱きたい」


 戸惑うように視線をさまよわせた次の瞬間、鋭いくらい真っ直ぐ見つめられる。すこし色素の薄い焦げ茶色の瞳に僕だけが映る。ああ、僕はこの人の、この瞳に惹かれたんだった。


「…うん。僕も、ヒョンに抱かれたい」

「…ほんとに?無理してない?」

 自分から言っておいて眉を下げて不安そうにするものだから、可笑しくて思わず笑ってしまう。

「してないよ。ヒョンの好きにして……ううん、ヒョンの好きにされたい」

 ねえ、ジョンヒョン。僕たちすごく遠回りしてきたんだ。だから今更なにを取り繕おうとも思わないよ。今まで隠してきた分も、すべて曝け出そうよ。



「ねえ、ヒョン。ヒョンは、僕に、何してくれる? 僕は、ヒョンと、何ができる?」

 あくまで僕が望むスタンス。だってこの優しい兄は、僕の我が儘が好きだから。僕のおねだりを聞いて、しょうがないなあって眉を下げて、その大きな目を細めて、僕に甘えて。


「俺は、ぼみを、これでもかってほど甘やかしたげる。どろどろに、なにも考えられなくなるくらい甘やかして、お互い唇が腫れちゃうくらいたくさんキスして、手を繋いで、こっそりデートなんかもして、それで、」

 ヒョンが次の言葉を続ける前に、唇を唇で塞ぐ。強ばるヒョンの手に自分の手を重ねれば、ゆっくりと指と指が絡んでいく。触れるところすべてから、僕の想いが伝わればいい。だって、何を続けられても、僕の答えはイエスしかないんだから。僕がヒョンに与えられるのは、僕しかないんだから。


「…ぼみ、好き、好きだよ、ぼみ、大好き、」


 うわ言のように何度も僕の名前を呼んでは、顔中にキスの雨を降らせる。


「僕も。僕もジョンヒョナが好きだよ」


 何度目かのキスをしようと近付いた顔を両手で挟んで、鼻先にちゅっと口付ける。まさか僕からそんな場所にキスされると思わなかったのか、一瞬目を見開いてすぐに目尻を下げてとろけたように笑う。顔中で「愛おしい」と伝えてくるその笑顔が好きだ。

 どちらからともなく唇が重なり、世界には僕とヒョンだけになった。




彼と彼の話


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