parallel

□the action
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the action


 きっかけなんて、これといったものがあったのかもしれないし、なかったのかもしれない。


 それは、通学の時間帯が同じでいつも向かいのホームにいたことかもしれないし、高校の最寄り駅の前にあるすこし寂れたCDショップで同じアーティストの新曲を手にしていたことかもしれないし、テスト期間に図書館で斜め前に座ったことかもしれないし、その時に光ったシルバーのリングピアスから目が離せなかったことかもしれないし、そのピアスが自分の指のリングと同じセレクトショップの数量限定モデルだったことかもしれないし、そこでたまらず声をかけたことかもしれない。そしてするすると糸が解けるように意気投合し、気付けば昼休みと登下校を共にしていて、駅前のファストフード店でひとつのポテトと愚痴をつまみにシェイクを啜ったさっきかもしれない。


 きっかけなんて、山ほどある。


 それでも、駅のホームで、乗るはずの電車を見逃して、どちらからともなく唇を寄せた理由は分からない。
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