novels

□Hello
3ページ/3ページ


 オニュ兄の一声で、僕を含めて全員が一斉に食卓の皿をかっ込んだ。何を隠そう、全員寝起きのボサボサ頭に寝巻きのままだ。頬に詰め込めるだけ詰め込み、飲み込んだ人から洗面所の優先権は得られる。

 一番最初に席を立ったのはキー兄で、シンクに自分の分の皿を水に浸すと「お先に!」と洗面所に引っ込む。見た目に気を遣う兄が一番に占領してしまい、口いっぱいに頬張ったままの兄たちは顔を見合わせて咀嚼をはやめる。

 次に飲み込んで皿を片したのは、キー兄の次に洗面所の占領時間が長いジョンヒョニ兄だった。このふたりが席を立った途端、ミノ兄とオニュ兄は椅子の背もたれに寄りかかり、席を立つことを諦めた。ゆっくりと飲み込み、皿を片す。髪や服にあまり気を遣わないふたりは、適当にハンガーラックと洗濯物の山から服を選んで部屋に戻っていった。


 珍しく皿を片付け、部屋に戻る。洗面所からはドライヤーの音とふたりの言い合うような声が聞こえ、洗面所はもう空かないだろうと察する。このひどい寝癖はお気に入りのキャップで隠してしまおう。この前一目惚れしたスウェットと、いつものスキニーを履いてから、朝履いた靴下はジョンヒョニ兄のだと思い出した。やっぱり、どうでもいいけど。



 リビングに戻ると、すでにオニュ兄とミノ兄がソファで携帯をいじっていた。オニュ兄は相変わらず変な柄のセーターだし、ミノ兄の数ヶ月前に提供されたスポーツジャージはここ最近のお気に入りだ。数分後、髪を綺麗に整えたジョンヒョニ兄とキー兄が入ってきた。ワックスやメイクこそしていないものの、真っ白なカットソーに派手な柄のジャケットとダメージジーンズのキー兄と、パーカーからブルゾンにスキニー、靴下まで真っ黒なジョンヒョニ兄が並ぶと、まあ目立つ。何が目立つって、そのサングラス。自分も含めて五人を見比べて、どうにもちぐはぐで可笑しくなる。


 全員がリビングに揃ったと同時にオニュ兄の携帯が鳴った。さっきと同じ着信音が三コール。マネージャーが下に車を回してくれたんだろう。うーん、と腕を伸ばしてソファから立ち上がる。昨晩放ってそのままのリュックを背負って玄関に向かう。身支度の早い兄たちはもう外に出たらしい。


 珍しい日だと思ったけれど、いつもと何も変わらない。もう数ヶ月もすれば、次のカムバックが始まる。個人の活動もきっともっと増える。自ずとこの宿舎が空になる日も増えるだろう。それでも、このいつもの朝から、いつもの毎日が始まるのだと信じている。



 しばらくして、鍵を忘れた、とリビングに戻ったキー兄の声が甲高く響いた。


「テミナ!だから牛乳片せって言ったろ!」







時には昔の話をしようか
 


前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ