遊戯王GX 英雄伝
□一期
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はるか宇宙に広がる、とある銀河。
月の光さえ通らない奥深く、そこにはデュエルモンスターズの精霊達が集う惑星があった。
「ネオスよ、全てはあなた達の力にかかっています」
銀河を支配する女王・コスモクイーンが、その玉座からくだって階下のネオスへと言葉を投げかけた。
『今宇宙は未曾有の危機に瀕している』
精霊界の重鎮達が口をそろえて言う。
優しい闇の力を持つネオスとその仲間は特別な使命を受け、すぐに十代をネオスペースへ誘った。
「宇宙の危機? いったいどういうことなんだ?」
「ああ、それが……」
ネオスはつまびらかに明かした。
「ダークネスと破滅の光が宇宙で戦っているだって!?」
十代は驚いた表情で問い詰めた。
事態を重く見た十代は、頼れる友に連絡を取った。
『それは本当の話なのか?』
「ああ、ネオスが言っていた」
『わかった、こちらでも調べてみる。インダストリアル・イリュージョン社にも連絡をしておこう。だが気をつけろ。どちらか片方だけでも厄介だというのに……』
オースチン・オブライエンの窘めるような言葉に十代は少しだけ嬉しそうな表情を浮かべ、通話を切った。
「ペガサス社長に話が行けば、なにか力になってくれるだろう。破滅の光がホワイトホールから生まれでた物だということを発見した人だし」
「ああ、だが十代。オブライエン君が言っていたことも事実だ。いくら我々がついてると言っても、単独で宇宙の戦いに挑むのは少し無謀ではないか?」
「わかってるさ……、だが、こんな戦いに誰かを巻き込むわけにいかないだろ?」
夜空に広がる星を見ながら、悲しそうに笑った。
「クッ……、すごい引力だな……!」
「いや、これは引力ではない……! なんというすさまじい力だ……」
時は流れ、普段はエーリアンが棲む銀河に訪れた十代の目の前で、二つの大きな力がぶつかりあっていた。
一つは爆発による赤い光と青い電光が走る黒いひずみ。
もう一つはまぶたの裏さえ白く染め上げる白虹をまとった、宇宙の光を全て集めたような閃光。
その二つが引き合うように強くぶつかって、さながら星の引力のように周りの物を吸い込んでいる。
「へへっ、このままじゃ文字通り粉々だな」
力の狭間で砕け散る隕石や星々を見て自嘲げにつぶやいた十代は、具現化したブラックパンサーの背中にまたがって宇宙を駆けた。
とてともない早さで移動するブラックパンサー。
だが、十代には少しも距離が近づいた気がしない。
不思議に思った十代がブラックパンサーに制止の声をかけようとした瞬間。
「!」
景色が変わった。
「なんというすさまじい力だ……」
横でネオスが冷や汗をかいている。
その表情も台詞も、十代からすれば聞き覚えしかない。
見れば、先程粉砕された星がまだ破壊されずに残っている。
「こ、これは……、ネオス! 様子が変だぞ!」
「なに? いったいそれは……、危ないッ!?」
「うわっ!」
十代の焦った声に戸惑ったネオスだったが、それどころではなくなった。
十代の元に黒白の波動が重なって貫こうと迫ったのだ。
「っぶねー! 助かったぜネオス」
「ああ。だが、今の波動は……、!? 十代、あれを見ろ!」
「あ、あれは!?」
十代とネオスの視界に映った光景、それは先程まで苛烈を極めた戦いを繰り広げていた二つの力が融け合うように渦を巻き、うねりをあげて膨らんでいく様だった。
「二つの力が……」
「破滅の光とダークネスが混ざるだって!? それにあの混ざり方……、あれじゃあまるで!」
その独特な弧の描き方は十代もよく使うカードの絵柄とうり二つに思えてしかたなかった。
『――『混沌融合』――』
どこからか声がした。
十代の目の前は真っ暗に。
そして世界は掻き消えた。
「う、ううっ……」
十代の目が覚めた時、最初に視界に映った者はカードが散らばるコンクリート製だった。
「ッテテ……、あれ、このカードは……」
「大丈夫かい?」
「ああ、大丈、夫……、ああああなたはッ!?」
とっ散らかったカードを拾い集めながらぼーっとしていると声をかけられた。
気が動転して頭の働かない十代が空返事で顔を上げると、そこに立っていた青年はひとさし指を自分の口に寄せ、そっと手を差し出した。
「ぶつかって済まなかったね」
「い、いえ、そんな……、でもなんで今の時代にあなたがここに」
「キミこそこんな所に居て大丈夫かい? 今日はデュエルアカデミアで試験があるんだろう」
「試験……? あ、あの、今って何年ですか……?」
「? 2004年だけど……」
「えええええええええーーっ!?」