遊戯王GX 英雄伝

□一期
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「それじゃあ、キミは数年後の未来からやってきたんだね?」

「はい! そういうことになります。信じてくれてありがとうございます!」

「ボクもある意味タイムスリップを経験した人を間近で見てきたからね」

 十代のたどたどしい説明を聞き終えた遊戯は感慨深げにつぶやく。
 十代もかつて存在したと言われるもう一人の人格の話を聞いたことがあった。

「でも、そうか。そういえば、この日初めて遊戯さんに会ってハネクリボーを貰ったんだっけ……」

「ハネクリボーを……? そう、じゃあキミは試練を終えたんだね」

「はい」

「ならボクからキミに、ひとつプレゼントをあげようかな」

「プレゼントですか?」

「ああ、と言っても特別な物じゃないよ」

 精悍な顔に苦笑いを浮かべ、遊戯がデッキホルダーからおもむろに一枚のカードを取り出した。

「このカードは?」

「キミは新たな人生を歩み出した。それはきっと、人の世の与り知らぬ場所で、多くの戦いに満ちた使命が水先案内をするような苦難の連続かもしれない。だが、どうか忘れないで……、世界にキミ一人だけしか存在しないわけじゃないこと。どこかの誰かが何かと戦い続けているということを」

「……ハイ!!」





 所変わってデュエルアカデミア実技試験会場。あまたの決闘者が未来をかけて乱闘を繰り広げた場所である。
 十代にとって一度は昇ったことのある登竜門だが、それでもワクワクが抑えられないようだ。
 その扉が閉まる直前に駆け込んだ。その早さはまるで一陣の風に乗って煽り舞う木の葉のようだ。

「受験番号百十番! 交通事故で電車が遅れちまってさ……、ギリギリセーフか?」

「早くしなさい。もうキミの番号は終わっているはずだぞ」

「ああ、クロノス教頭によろしく言っといてくれ!」

「ん? ……クロノスは実技担当の一般教師だったはずだが」

「と言うより、なんでクロノス教諭のことを知ってるんだ?」

「さあ?」

 足早にゲートをくぐり抜ける十代の背中を見ながら、受付係の大人達は首を傾げた。




「あ、サーテ。これで試験は全部終わったノーネ? ワターシはこれから童実野町旅行の予定があるから早く終わらせルーノ!」

「待って下さいクロノス試験官。どうやら交通事故で遅刻した者が居たようで、先程到着したとのことです」

「遅延証明書はあったのデショーネ?」

「ええ。やるほか無いと思います」

「じゃあさっさとやればいいじゃナイーノ」

「それが……、あとはもう試験責任者のクロノス教諭からの一言だけなので先に帰ると……。もう試験官はクロノス教諭だけでして」

「ケ・ストゥピド(そんなバカな)!? ……ええい、仕方ないノーネ! この最高実技担当教諭たるクロノス・デ・メディチが直々に担当してあげマショー。で、番号は?」

「百十番です」

「百十番!? てんでザコ! ワタシを相手にするなんて、一瞬でカタがついて実力がわからないかもネ。ニョホホホホホホ!」

 そんな馬鹿笑いをする白面痩躯の男が、かつて十代に教導した最高の教師、クロノス・デ・メディチその人であった。
 今はそうでもないが。

「ふーっ! 遅刻しちまったようだな。いやースマンスマン」

 二階の客席に踊りでた十代が朗らかに大声をあげる。そこは試験と関係ない見学者が集まる場所だ。まわりが呆れ顔をする中、十代は出口を間違えたことに気がついて柵を飛び越えた。

「よっ、と。なんとか間に合ったかな」

「なな、な……危ないノーネ!」

「ん? ああ確かに。危うく遅刻するところだったな」

「そこじゃない!」

 二階から、しかも十メートル以上は高い場所から軽々しく飛び降りて事も無げにする姿に、クロノス含め会場中が騒然とする。
 ざわつきを耳に、すっと瞳を閉じた十代が決闘盤にデッキをセットした。
 にわかに緊張感が増す決闘空間に、会場内でクロノスとカイザー亮ただ二人だけがその変化に気がついていた。

(このボーイ、尋常ではないノーネ!? このオーラと気迫はまるで、プロ……!)

「胸を借りるぜクロノス先生……」

「「 デュエル !!」」

「先攻はオレからだ……。オレはNグラン・モールを召喚! カードを」

 十代の呼び声に小さなモグラが地面から顔を出す。

「更にカードを2枚セットし、ターンエンドだ」

「ペラペーラ! なにかと思えば低攻撃力をむざむざ攻撃表示で出して攻撃を誘う、なんとも陳腐なデュエル! お手本を見せてあげまショ!」

「…………」

「ワターシは魔法カード二重召喚を発動! このターン二度召喚を行えマス! そしてトロイホースを召喚! このカードはダブルコストモンスター。その意味がわかりますか?」




「古代の機械巨人、召喚!!」
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