【銀魂】河上万斉 夢

□4話
2ページ/2ページ

万斉side

万斉は怒っていた。理由はただ一つ。名無しさんを奴隷として扱い、その上深手を負わせた天人が気に食わなかったからだ。

名無しさんはいつも怯えていた。ここに来て一週間立ったが、未だにここが心休まる場所になっていないのは確かだ。

特に男と接する時、いつもビクビクしている気がする。何百人の天人を斬り捨てた者にしては、随分と内気な性格だと思ったが、なるほど。そういう生い立ちがあったなら、そうなってしまうのも無理はない。

気に食わない。何故そこまで自分が気にしているのか分からないが、ただ今は天人への怒りの方が勝っている。

しかし、天人はうちの大事な取引相手。下手に手を出したら、個人的な恨みだけではなく隊全体に損害をもたらすだろう。


ーーさて、どうしたものでござろうか。

どうしたもこうしたも、結局何もしないという選択肢は自分にはない。何かしなければ気が収まらない。

「万斉、ちょっといいか?」

悶々としながら長い廊下を歩いていると、自分の主、高杉晋助に呼び止められた。そのまま促され、高杉の自室に入る。

「晋助、どうしたのでござる」

「狼型天人に裏切り行為が見られた。奴ら、俺たちの情報を何故か幕府に売ろうとしていたらしい。多分名無しさんの事だろうな。アイツら相当名無しさんに恨みを持ってるらしい」

ククッと可笑しそうに高杉は笑った。そして、

「その狼型天人は、名無しさんを奴隷として飼っていた奴らだ」

と繋げた。
自然に握った拳に力が入る。なぜ名無しさんが奴隷だったことを知っているのか。それは高杉が何度かその天人の本拠地に、足を運んだことがあるからだ。その時に名無しさんの姿を、見たことがあったのだろう。

「やってこい万斉。狼型天人を」

黙って万斉は出て行った。

「名無しさんの為にもな」

キセルを吹かせながら呟いた高杉の言葉は、既に出ていってしまった万斉には届いていなかった。
次の章へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ