【銀魂】河上万斉 夢

□3話
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一週間後私は、誰よりも早く起きて雑用をやり始めた。
トイレ掃除、廊下掃除...etc

「おっ、おはよう 名無しさん。早い起床でござるな」

しばらくして万斉さんが起きてきた。すると、一瞬眉をひそめ、私の格好をジロジロ見て、

「 名無しさん、主...もしかして、船の掃除していたのか?」

と言った。ドキッと心臓が跳ねる......わ、悪い事してたわけじゃないのに。

「は、はい......だ、ダメでしたか?」

「いや、幹部が掃除なんてしなくていいでござる。まだ少ないが、幹部以外の隊士もいるんでござるよ」

それは分かっているが何もしない訳には行かない。

「それでもお世話になってるんですから、何かしないと気が休まりません」

無意識に目線が落ちて、自分のつま先を見ていた。

気が休まらないというのは嘘だ。いや、あながち間違っていないかもしれないが、 名無しさんの癖なのだ。天人に奴隷として扱われていた時の癖。何処か掃除をしていなかったら殴られ、罵られる。
今ここに天人達はいない。しかし、トラウマはそう簡単に拭えるものではないのだ。

そういった考えを、すべてサングラスの奥で鋭く光る双眼に、全て見透かされている気がして 名無しさんの目は、ますます下を向いてしまうのだった。

不意に、万斉は自分の目の前で俯き、肩を強ばらせている小さな女性に腕を伸ばした。
瞬間、 名無しさんが身構える。

「っ!!!」

「すまん。驚かすつもりは無かったのでござる」

ただ、小さく脆そうで、今にも壊れてしまいそうな彼女がとてもいじらしく、はたまた危うくて思わず、小さな肩に手を伸ばしてしまっただけだった。しかし、伸ばしたところでどうするつもりだったのか。

行き場をなくした手は、己の頭をかくために使った。

「 名無しさん、その箒は拙者が預かろう。主も朝食を食べに行くといい」

万斉は、出来るだけ怯えさせぬようゆっくり近づいて、 名無しさんの持っていた箒を優しく引き受けた。

至近距離に自分より、20cm以上も高い万斉が近づいたことで、万斉の息が頬にかかった。
朝食をとって、洗顔も済ませたのだろう。爽やかなミントの香りがした。

「は...はい!!」

こんなに至近距離に男性が近づいたことなんて滅多になく、しかも自分を助けてくれた恩人だ。それなりに意識していた男性が、息のかかる距離にいれば恥ずかしくなるのも無理はない。

名無しさんは、赤くなった顔を見られぬように片手で顔を覆い、その場から逃げるように立ち去った。
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