【銀魂】河上万斉 夢

□6話
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万斉に連れられ、名無しさんは食堂に来た。座るよう促され、長机に座ると万斉も隣に座ってきた。

流石に昼を過ぎたから、食堂の中には万斉さんと自分しかいない。話をしよう。と言われたが、二人きりを望まれたということは、改まった話なのかもしれないと、無意識に身構えてしまう。

「名無しさん。主の仇である狼型天人は、もうこの世にはいないでござる。晋助から話は聞いたでござろうか」

「はい。万斉さんが全滅させたと......」

あぁ。と万斉は静かに頷いた。意図が読めない。高杉に聞いたかどうかを確認する為に、二人きりを望んだのか?

「......できれば、来島では無く拙者に話して欲しかったでござる。思い出したくないなら言わなくていいでござるが、何をさせられてた?」

珍しく眉毛を八の字に歪め、寂しそうに話す万斉が、少し可愛く思えた。
何処で、と言われなくてもわかる。天人に何をさせられていたかを聞いているのだろう。

「屋敷の掃除と、食事の世話、庭の手入れ、散歩の付き添い......ですかね?」

「それだけか?」

隣に座る万斉がググッと距離を詰めて来た。

「は、はい!それだけです......」

「夜の......性の相手は?」

なっ!!と、言葉の意味を理解し、小さく声を出した名無しさんの顔はみるみる赤く染まり、口をパクパクさせていた。

その慌てている様子がとても可愛くて、何もされていないのを分かっていて万斉は、更に意地悪を続けた。

「主もそこまで子供なわけじゃないでござろう?そういう相手をさせられたことは、本当にないでござるか?」

半分冗談、半分本気。まぁ、あの状況でヤツが嘘を言ったとは思えない。名無しさんの身体が汚されていないのは分かりきっている。

「売られた時、私は子供でした!!ですから、ずっと子供扱いのまま使われてきたんです。そ、そういう相手はもっと歳上の方が......されていました......」

最後はもう、蚊の鳴くような声だった。真っ赤になった名無しさんの態度が、自分の潔癖さを何よりも証明している。

「すまん、少し意地悪が過ぎたでござる。あまりにも初で、いじらしいもんだからつい出来心が生まれてしまったでござるよ」

「も、もう!!万斉さんの意地悪!!!!」

恥ずかしさのあまり、万斉を軽くぺちぺちと叩いてしまう。
はっと名無しさん我に返って、自分の失礼な態度を詫びた。

「ごめんなさい!!馴れ馴れしかったですよね?」

「いや、拙者に心を開いてくれた証拠でござろう?嬉しかったでござる」

ニッコリと口角を上げ、て万斉は微笑んだ。きっとサングラスの奥にある鋭い瞳も、今は優しく細まっているのだろう。

「良かった......あ、あの遅くなりましたが色々ありがとうございました!!助けて貰ったお礼もまだでしたよね?その上仇もとってくださって......」

「いや、いいんでござるよ。仇討ちに関しては、晋助の命があったからやったものだが、きっと命が無くてもやってたでござろうな」

名無しさんは、高杉に言われた言葉を思い出した。命が無くてもやる理由なんてあるのだろうか?

「命が無くてもやっていた......というのは?」

ん?と此方を見た万斉は、今度は悪戯っぽく口角を上げた。
そして、さらに距離を詰め名無しさんの耳元で囁いた。

「まだ教える訳にはいかないでござる。これからゆっくり教えるから、覚悟して欲しいでござるな」

では、また。と去っていった万斉は、チラッと名無しさんの顔を盗み見た。
耳元で囁かれた名無しさんの顔は、先程よりも真っ赤に染まり、思考が停止していた。

耳元で囁かれたことが恥ずかしかったのか、それともどういう想いを含んだ言葉だったのか理解したのか......いや、前者だろう。

どちらにしても可愛い名無しさんの顔を見られた満足感で、既に食堂を離れていた万斉だったが名無しさんを思い出したのか、自然と口角を上げていた。
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