長編
□禁断領域3
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しんのすけの予想外すぎるその行動に、僕は瞬時に判断できなかった。
目の前にしんのすけの顔がある。
僕の唇を、同じもので塞がれている。
僕、今しんのすけにキスされてるのか....?
働かない思考を無理やり動かしてやっと今の状況を理解する。
蛇口から一滴落ちた雫の音がうるさいくらいに響いた。
「んんっ...はぁっ、」
唇が離れた瞬間、僕は無意識に声を漏らし涙目になっていた。
しんのすけの吐息は熱くてかすかにお酒の匂いがする。
「し....のすけ....何で....こんなこと....」
身体に熱が集まってくるのを感じながら、涙で視界が滲む中、彼に問いかける。
けれど聞こえているのか聞こえていないのか、しんのすけは無反応のまま長い指を僕の太腿に這わせてきた。
「ひゃあっ!ちょ、しんのすけっお前どこ触って...!!」
いつもなら考えられないしんのすけの行為に困惑しつつも、酔っているせいだろうと思い少なからず抵抗をする。
しんのすけの指を掴み押し退けようとするも、彼は気にすることなく無表情で、今度は僕の首筋に唇を寄せてきた。
「あ、だめっ、しんのすけっ!やめっ....!」
激しいリップ音をさせながら吸いついてくると、時折甘噛みしてくる。
いやだ、怖い...
こんな彼、僕は知らない。
しんのすけに恐怖を覚え強く目を瞑ったとき、彼の全体重が身体にかけられると二人して浴室の床に倒れ込んでしまった。
「わぁっ!?」
彼の身体を支えきれず、しんのすけに押し倒されるような体勢になってしまう。
それでもしんのすけは身動きすることなく、僕の首筋に顔をうずめたままぐったりとしている。
「しんのすけ...?だい、じょうぶか...?」
心配になり声をかけた直後、耳元で寝息らしきものが聞こえてきた。
「え...?寝てる...?」
僕の身体にもたれ、どうやら眠ってしまっているようだった。
耳元に感じるしんのすけの寝息と、お酒で火照った身体が密着してとても熱い。
「ど、どうしよう....」
彼をこのままにしてお風呂に入るわけにもいかない。
一旦服を着ると、しんのすけをベッドまで運ぶことを考えた。