長編
□禁断領域4
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※生理ネタ注意
その日は、突然訪れた。
家で大学のレポートを書いていた際ふとトイレに行きたくなり立ち上がると、太腿に生温かい何かが伝うような感覚があった。
「ん.....?」
下に目を向けると、短パンの裾から一筋の赤いものが垂れていることに気が付く。
「え....何これ、血....?」
自分の身体から流れ出ているのであろうその血液に一気に青ざめると、一目散にトイレへ駆け込み、ズボンと下着を脱いだ。
「ひっ...!」
驚くことに下着のみならずズボンまでもが真っ赤に染まっており、ツンとした血液の僅かな匂いが鼻をついた。
「どうしよう。この身体のままずっと放っておいたから、きっと取り返しのつかないことになったんだ....」
絶望と恐怖で脚がガクガクと震える。
立っていられなくなり、便器の上に座り込んでしまった。
「どうしよう、どうしよう。病院、行かなきゃ....」
このまま座り込んでいても、何も起きない。
おぼつかない足取りでトイレから出ると、新しい下着とズボンに履き替える。
鞄、財布、保険証を手に持つと、玄関の扉に手をかけた。
「っ!い、たぁっ...!?」
その刹那、今まで感じたことのない腹痛に襲われ、床にへたり込んでしまった。
キリキリとお腹が裂けそうな痛みにみまわれ、立ち上がれなくなる。
「う、あっ、痛いっ....」
お腹を押さえてみても撫でてみても痛みが和らぐことはなく、それどころがどんどん辛さが増していくばかりだった。
下腹部がすごい力で圧迫されるような衝撃に、うまく呼吸ができなくなる。
僕は、このまま死んでしまうのか...
先延ばしにしたりせずにちゃんと病院に行けばよかった...
薄れゆく意識の中、後悔の念だけが残った。
ーーー
「んん....」
目を開けると、視線の先には見覚えのある白い天井があった。
と、人物が一人。
僕の顔を心配そうに覗き込んでいた。
「あれぇ...?しんのすけぇ...?」
思考が定まらない中、彼の名前を呟く。
僕の声に安心したのか、しんのすけは安堵の表情を見せた。
「風間くん、大丈夫?俺が帰ったら玄関で血まみれになって倒れてるもんだから驚いたぞ...」
「血、まみれ...?」
あぁ、そうだった。
確か、腹痛がすごくて、それで...
その後はよく覚えていない。
「しんのすけ、僕死んじゃうのかな?怖いよ....」
涙がじんわり込み上げてくると、しんのすけのワイシャツの裾を掴んでしまう。
「いや、大丈夫でしょ。多分....生理だと思う」
「せ、いり....?」
「女には必ず訪れるやつなんだよ。大体月一回くらいのペースで」
「...僕、男だよ...」
「でも現に女の子の身体になってるんだからそうなんでしょ。まさか生理までくるとは思ってなかったけど」
そこまで言い終えたしんのすけは少しの沈黙のあと、気まずそうにあるものを僕に手渡してきた。
「...?何だ、これ?」
「ナプキン、さっき買ってきた。これなら服が汚れないんだよ。トイレでつけてきなよ」
「あ、なる、ほど...」
おずおずと手を伸ばし、しんのすけからそれを受け取ると布団から出る。
シーツまでもが自分の血で、白い生地が真っ赤に染まり返っていた。
「あ、しんのすけ...ご、ごめんなさい...」
「いいよ、気にしないで」
しんのすけの優しいその声に涙が溢れてきそうになるもグッと堪え、下を俯きながらトイレへと向かった。