長編
□禁断領域6
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※しんのすけ視点
俺には、昔から仲のよかった"風間くん"という幼馴染がいる。
男のくせに高めの可愛い声が特徴的で、俺より遥かに背が低い小柄な彼は、守ってあげたくなるような存在だった。
片時も離れることはなく、いつも一緒に行動していて、周りからは友達以上恋人未満とかって言われていた気がする。
けれど進路を決める時期になると、あれだけ一緒に居たのが嘘だったかのようにお互い違う道を選ぶことになり、卒業後は案外あっさりと離れてしまうことになってしまった。
その後も、一切風間くんに会うことはなかった。
ーーー
高卒にも関わらず、有名な大手IT企業に就職できた俺は周囲を顧みることもなく一心不乱に働いた。
その努力と成果を認められ、一年も経つ頃にはそれなりの収入も得ることができ、社会人生活は順調に送ることができた。
高級マンションを借り、家具もある程度揃えると、あとは此処に風間くんを迎え入れるだけだった。
俺は昔からずっと風間くんの事が好きだった。
彼は俺の事を友達としか見ていなかったけれど、俺は友達としてなんてみれなくて、いつも歪んだ感情で風間くんのことを想っていた。
想いを伝えようと毎日のように意気込んでは、この関係が崩れてしまうのではないかという感情に支配されて結局言えずにいた。
風間くんから進学すると言われたときは、勿論俺も同じ大学に行きたかった。
でも俺は一緒の道を歩まず就職を選んだ。
風間くんと一緒に住んで、養っていきたかったから。
生活費も家賃も全て負担して、俺の手で風間くんを幸せにしたかった。
彼にはご飯を作ってもらって、風間くんの手料理を毎日食べて...
まるで夫婦のような同居生活を日々夢見ていた。
付き合えなくてもいい、愛し合えなくてもいいから、せめて風間くんの隣には居たかった。
一年間、風間くんに会わずに我慢して、我慢して、我慢して。
まともな収入を稼ぐことができるようになってやっと風間くんを誘う決心がついた。
躊躇う自分の迷いを断ち切って電話をかけ、風間くんに一緒に住まないかと伝えた。
卒業してから一度も会うことがなかった彼の声を久しぶりに聞いて、俺の声は少し上ずっていたかもしれない。
断られたり、彼女がいたりした場合は流石に諦めようと思っていた。
けれど、嬉しいことに、風間くんは快くそれを受け入れてくれたのだ。