長編

□禁断領域7
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「う....」


目が覚めるとこめかみ部分が鈍く疼き、意識に薄っすらと霞がかかっていた。

頭のまわりがジンジンと痛むし、胸がモヤモヤする。


これは....


「久々の二日酔い...気持ち悪い..」


ゆっくり起き上がると、胸焼けと共に激しい吐き気を催す。

最近くだらない飲み会ばかりであまり酒を摂取しないよう気をつけていたはずなのに、昨日は結構な量を呑んでしまっていた。


アルコールがまだ抜けていないせいでふらつく身体を無理矢理動かしながら適当な部屋着に着替え、寝室の扉を開けると部屋から出る。

リビングへ向かうと、愛しいその子は既に起床して朝食を作っていた。


「あ、しんのすけ。お、おはよう」

「んー....」


久しぶりに朝から聞けた風間くんの声に顔が緩むのを抑え、寝癖のついた頭を掻いてごまかす。


「頭痛い...」


額を軽く抑えながらソファへと背中を預け息を吐く。

そんな俺を風間くんは心配してくれていたが、残念なことに朝食は食べれるような気分ではなかった。


「なぁしんのすけ....聞きたいことがあるんだけど....」


一人分の朝食を机の上に並べると、風間くんは急に神妙な面持ちで俺の正面に座った。


「あ、あのさ...しんのすけさ、昨日の帰ってからのこと、覚えてる...?」

「昨日...?何も覚えてないけど」

「そっ、そっかぁ、そう、だよな!何も覚えてないかぁ!うん!」

「どしたの?昨日何かあったの?」

「ううん!何にもないよ!あ、しんのすけをベッドに運ぶのはすごく大変だったんだからな!」

「運んだ?俺、まさか玄関で寝たの?」

「あー、う、うん!そう!玄関で!あれは困ったよ全くもう〜!」

「悪かったね....」

「ほんとだよ!これからはあんまり飲みすぎんなよ!」


あはは、と冗談ぽく笑う風間くんに、俺はごく普通な素振りで問いかけに応じた。


つもりだった。





本当は、嘘だ。
昨日のことは覚えていないなんて。


はっきりと、今でも鮮明に覚えている。
昨夜、俺が犯してしまったあの過ちを。


忘れる訳がなかった。
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