長編

□禁断領域9 ※微裏
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※風間視点







「え....しんのすけ....?」


しんのすけに抱き締められているのだと理解した直後、暫くの間動くことができなかった。


彼の胸が目の前にある。
彼の香りでいっぱいになる。
彼の体温が僕の全身を包んでいる。


あれ、何で僕はしんのすけに抱き締められているのだろう。

確か、幻滅されたはずじゃなかったっけ....?



瞬時にいろんなことが頭の中を駆け巡る。

けれど、考えれば考えるほど混乱してくるばかりで、答えなんて一向に出てこなくて。


「へっ!?わぁっ!?」


気が付けばしんのすけに身体を抱きかかえられ、そばにあるソファに押し倒されていた。


「し、しんのすけ...?」


上に跨ってきた彼と視線が絡み合うと、身体が自然と硬直するのが分かった。

そのままの態勢で、しんのすけはゆっくりと距離を詰めてくる。


か、顔が近いっ....!
え、何だこの状況。
僕、どうすればいいんだ....?


「し、しんのすけ、あのっ.....」

「好きだ」

「.....え?」

「風間くんが、好きなんだ」


聞き間違えることのない、しんのすけの口から出たその信じられない言葉に息も思考も止まりかけた。


好きって....?
どういうことだ....?


「えっ、しんのすけっ.....んんっ!?」


言葉の意味を聞こうと口を開く前に、彼によって唇を塞がれてしまった。

突然の接吻に何もかもが吹き飛んで、頭の中が真っ白になる。


「んんうっ!やだ、しんのすけっ、んんっ!!」


何かを言いかけようと声を発する度に、角度を変えてしんのすけは何度も口付けをしてくる。

それを繰り返してようやく唇が離れると、空気を求めて僕は荒い呼吸をさせながら息を吸い込んだ。


「はあっ...はあっ...な、にすんだしんのすけっ。また酔ってるのか?やめろよ、こんなこと....!」


力無くしんのすけの顔を睨みつけるも、涙で滲んだ視界のせいで彼の表情はあまり見えない。


「風間くんが好きなんだ。どうしようもなく好きなんだ」

「何、言ってるんだよ.....!?しんのすけ、お前変だぞっ!」

「風間くんっ....」


しんのすけは再び僕に覆いかぶさると、身体の隅々まで唇をおとしきては舌で執拗に攻めたててくる。


「いやっ!!」


這い回るしんのすけの熱い舌の感触に、無意識のうち身体全体がゾクリと疼いた。


いや、いやだ。
この人は誰?

しんのすけじゃない。
こんな人、僕の知っている幼馴染のしんのすけじゃない。


「風間くん、好きだ。好きだ好きだ好きだ好きだ...!!」


肌に吸い付きながらしんのすけは狂ったように何度も何度も同じ言葉を連呼してくる。


だめ、だめ。
こんなの続けていては、だめだ。


「しんのすけ、やめてくれ!お願いだ!」


精一杯の大声で叫び、力を振り絞って彼の胸板を押し返しながら少しでも抵抗の色を見せる。


「. . . . . . . .」


しんのすけは無言で動きを止めると、僅かに僕から身体を離してくれた。


よかった、やめてくれた....


「風間くん、少し大人しくしててね」

「えっ.....」


ホッとしたのも束の間、背筋が凍り付いた。

何をするのかと思えば、しんのすけは自分のネクタイを外して僕の両手首をキツく縛り上げたのだ。

腕を頭の上に固定され、まともに動くことができない。


「っ!?やっ、しんのすけっ!?やだぁっ!これほどいてぇっ!!」

「これでもう動けないね」


必死な抵抗も敵わず、彼は僕に向かって満足そうに微笑むと再度唇を重ねてきた。


「んぅっ!?」


間髪入れず、しんのすけの舌がヌルりと僕の唇をこじ開けて入ってくる。


「んんっ、ふぁっ....!」


振り切りたいのに、拒絶したいのに、しんのすけの舌に絡め取られているせいでそれを許してはくれない。


なぁ、しんのすけ。
やめて、やめてくれ。

怖いよ.....


広い室内に、二人の息と厭らしい水音だけが痛いくらいに響く。

口内を刺激されていることに意識が集中しすぎて、しんのすけがワンピースの胸元に手をかけてきたことに反応が少し遅れてしまった。
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