長編

□狼と赤ずきんちゃん 2
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〜1ヶ月前〜


「もえちゃんっ!一緒に帰ろう?」

「うん!一緒に帰ろっ風間くん!」


他愛のない会話を交えながら校舎を抜け、普段通り彼女と肩を並べて帰宅路を歩いていた。

友達の隣にいるっていうのがこんなにも楽しいだなんて知らなかったから、僕ともえちゃんはいつも二人で一つだった。


「ねぇ、君たち!ちょっと待って!」


曲がり角をまがったところで、見知らぬ制服の男が数人、突如僕たちを囲い込むようにして声をかけてきた。


...はぁ、またか。


毎日うんざりしていた。
もえちゃんはお人形のように可愛い。
気品があってその上誰に対しても優しい。

そんな彼女を、醜くて汚い狼どもは手に入れたがるのだ。


護身のため、幼い頃から空手を習っていたのが功を成したおかげで体術に自信があった僕は、もえちゃんをいつも守っていた。

ナンパ野郎数人なんて、正直苦ではない。

ため息を吐き無視して進むと、咄嗟に一人が彼女の手首を掴んだ。
怯えるもえちゃんを背に庇い、間髪入れず相手に蹴りを食らわす。


「...!何すんだよテメェ!」

「女の手、勝手に触るなよ」


睨みをきかせながら言葉を吐き出すと、今度は別の男が僕の肩を乱暴に掴んできた。


「....だから、勝手に触るなって言っただろ」


僕はその手をギュっと握り反対方向に捻り上げてやると、小さく唸り声を漏らしながら苦痛で顔を歪めた其奴が呟いた。


「お前、舐めてんのか?」

「誰が舐めるか、そんな汚いモン」

「意味が違ェんだよ!!!」


男の怒号が拍車をかけたのか、姑息にも三人がかりで襲いかかってきたのだが、僕には其奴らの動きが全てスローモーションのように映って見えた。

コイツら、全然喧嘩慣れしてないな。

やけに冷静に一人一人見極めながら、それぞれの急所に強烈な蹴りをお見舞いし、相手の動きを難なく封じ込む。


呆気なく地面にうずくまった男たちを冷たく見下ろし、もえちゃんを連れて立ち去ろうとしたとき、それまで一部始終をずっと傍観していた一人が彼女を後ろから羽交い絞めにした。


「もえちゃん!」

「風間くんっ…」


僕が一瞬の隙を与えてしまったせいで、彼女の表情はすっかり怯え切ってしまっている。

たとえほんの少しだって、もえちゃんに傷をつけるのは嫌だ。


「お前、暴れすぎなんだよ」


先ほど肩を掴んできた其奴がいつの間にか起き上がっており、僕の前に立ちはだかった。


「お前みてェな地味で根暗そうなガキが調子乗ってんじゃねェぞコラ」

「..........」


僕は拳を強く握り締め、覚悟を決めた。
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