長編
□禁断領域9 ※微裏
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唇を重ねたまま、ワンピースの胸元についているボタンを彼は片手で器用に外していく。
「んんんっ!?」
しんのすけがこれから何をし始めようとしているのか僅かながらに理解した僕は、首を横に振り逃げるように身をよじらせた。
「い、いやだっ!しんのすけっ...もうやめてっ、やめてくれっ.....!」
懸命な僕の願いも叶うことなく、しんのすけによって半ば乱暴に開かれたそこはあっけなく解放されてしまった。
「....下着も女ものの付けてるんだね」
「あっ、あっ、だめ、見るなぁっ....!」
彼の指摘に恥ずかしさと惨めさが同時に込み上げてきては、涙がとめどなく溢れ出してくる。
「はぁっ、風間くん。可愛い...今の風間くん、本当に女の子だね」
「ひうっ、しんのすけっ、もう、いやだよっ....」
「俺に、全部見せて」
下着を胸の上までまくりあげられ、しんのすけの目の前であっという間に膨らみと蕾があらわにされてしまった。
「あっ、あっ、やぁっ、見ないで、見ないでぇっ....!」
ネクタイで手首を縛られているせいで、胸を隠すこともできない。
抵抗しようとすればするほど肌に食い込み、その度に痛みが走る。
「トオル」
しんのすけに名前を呼ばれ、身体が強張った。
「し、のすけ....」
「可愛い」
しんのすけの腕が此方に向かって静かに伸ばされると、押さえつけられるように胸を揉みしだかれた。
「んあっ....!」
「トオルっ、トオルっ....」
しんのすけは僕の名前を繰り返し呟きながら胸元に顔を近づけると、先端の蕾を舌先で舐めあげてきた。
「ひゃぁぁんっ!」
今まで与えられたことのない感覚に、身体がビクビクと震えてくる。
もう、やだ....
誰か、助けて....
「野原くーん?大丈夫ー?もう休憩終わっちゃうよー?」
僕の救済が届いたかのように、外から突如、女性の声が聞こえてきた。
何故その場にいるのか分からないけれど、これはチャンスだ。
「おいっ、しんのすけっ。誰か呼んでるぞ...?仕事仲間の人なんじゃないか...?」
「気にしないでいいよ。あんなの放っとけばいい」
しんのすけはまるで聞く耳を持たず、それどころか弄ぶように胸の先端を吸い上げてきた。
「ひあっ!....なぁ、お願いだっ!しんのすけっ、まだ仕事の途中なんだろ!?あの人待ってるみたいだぞ?早く、出てあげろよ!」
僕の言葉は全部無視され、無言のままのしんのすけは舌で胸を愛撫しながら太腿に指を添わせ、ゆっくりと撫で回してくる。
「なぁっ、しんのすけ!!お願いだから、もう、もうやめてくれよ....僕の声が聞こえないのか...?」
必死にしんのすけの顔を見つめる。
なぁ、どうして聞いてくれないんだ?
どうしてこんなことするんだ?
どうして、笑ってくれないんだ....?
「野原くーん!?家の中入っちゃうわよー?」
しんのすけは相変わらずその行為をやめてくれないし、なおも外からは女性の声が聞こえ続けている。
彼の手が、スカートの裾にかけられた。
「お願いだからもうやめてくれ!!!!!」
悲鳴にも似た僕の叫び声に、しんのすけは身体を一瞬ビクッと震わせると動きを止めた。
今まで生きてきた人生の中で、こんなにも大きな声を出したことはなかっただろう。
自分でも驚いていた。
「し、しんのすけ....?」
未だ動きを止めたままの彼を目に映す。
「あ.....」
小さく声を漏らし、僕の姿にしんのすけは目を見開いた。
「ご、ごめん。風間くん、ごめんね....」
我に返ったのかしんのすけは謝罪の言葉を何度も述べてくると、僕の手首を縛っていたネクタイを解いてくれる。
「痛かったよね....ごめん、ごめんね....」
「しんのすけ....」
ネクタイを締め直し、しんのすけは力無く立ち上がった。
「俺、もう行くから....」
「う、うん」
終始顔を俯かせ、書類を手に取るとしんのすけは部屋から出ていった。
「. . . . . . . . .」
しんのすけが居なくなった部屋に静寂が戻ってくる。
もしかしたら今さっきの出来事は全部夢だったのではないか。
全部嘘だったのではないか。
そう思わないといけないような気がした。
"風間くんが好きだ"
しんのすけの言った言葉が頭の中で呪文のように木霊する。
「うっ、ふっ....しんのすけの、馬鹿ぁ....」
乱された衣服をなおし、僕は一人、頬を濡らし続けた。