【長編】ポケットモンスター ルフェインアヴァンチュール

□第1話
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アリアから連絡をもらい、準備をするために設けた3日間の猶予を使い、アイカはある人物の家にまで足を運んでいた。

その相手とは

「……え? ミュトス地方のチャンピオン代理?」

『うん。母さんが父さんと2人きりで半年くらい旅行したいって言ってたから、私が引き受けたんだ。それで、しばらくホウエン地方から離れるからね。ダイゴ兄さんが心配して鬼電してこないように報告しに来た。』

トクサネシティにあるホウエン地方の元チャンピオン。

つい先日、挑戦者のユウキに負けてしまったことにより、チャンピオンの座から降りた青年、ツワブキダイゴの自宅だ。

「あはは……あの時は悪かったよ……。どこに行ったかわからなかったからつい、あんなにいっぱい連絡を……。」

自分の自宅にまでわざわざエアームドの背に乗ってまでやってきたアイカに対し、ダイゴは軽く苦笑いをする。

過去に、遊びに行ってみたらどこにもアイカがいなくて、それにより慌ててどこにいるのか確認するために何回も電話をアイカのライブウォッチにいれたことを思い出して。

実を言うと、この元チャンピオン……アイカの幼馴染なのだ。

幼い頃にホウエン地方にコンテスト関係で出張していたケイトがトクサネシティに引っ越してきていた時に、、それについてきたアイカと知り合い、家が近いという理由から、よく一緒に過ごしていた。

そのためダイゴの中には自分より年下のアイカを妹のように可愛がる感情が芽生えており、成人した今でもよくお茶に誘ったり、遊びに誘ったりとしていた。

そんな彼が、ミシロタウンの自宅にいなかったアイカを心配するのは必然的で、心配して鬼電しまくるのも、当然だった。

なぜならダイゴの中には、アイカに対する兄妹愛の溺愛と、特別な好意からの溺愛があるために。

もちろん、ダイゴはそれを表に出さないようにしている。

だが、やはり好意とは恐ろしいもので、アイカと一緒にいる時間を増やすために何かと仕事をほったらかしてアイカの元を訪ねている。

そんな彼からしたら、アイカから自分の元に訪ねてくるのは珍しい石を見つける、色違いのポケモンを見つけるレベルのレア度がある。

そのため、気分はまさにたきのぼり。

とんでもないほどに舞い上がった。

しかし、訪ねてきた彼女から告げられたのは頭にイシツブテがぶつかったくらいショックなものだった。

半年間も、僕はアイカに会えなくなるのか……。

だだ下がりの気分。

ダイゴとしては例えるならレア中のレア石を失ってしまった以上のものである。

『ま、そう言うことだから、私はミュトス地方に行くよ。一応、定期的に連絡は入れるつもりだけど、連絡がなかったからってまた鬼電してこないでよ? そんなことしたら今度こそ本気で着拒するからね。』

そんなダイゴの心境など露知らず、アイカは要件だけをさっさと言って、その場からエアームドの背に乗り飛び去っていく。

「着拒はかんべ……って、もういない……。」

立ち去ってしまった想い人にしょんぼりとしてしまうダイゴ。

脳裏には、どうやって半年間もアイカ不足に耐えようかと考えを巡らせる。

自分を下してチャンピオンになった少年、ユウキ。

まだ幼い彼にチャンピオンとしてリーグに在住させるのはあまりにも早すぎると考えて、今もなお、旅をしている彼の代わりに、チャンピオンとしての椅子に腰を落ち着けているため、地方を離れるのはあまりにも無責任すぎる。

ぐるぐると頭を抱えて考える。

自分の代わりに、チャンピオンの椅子にいてくれそうな存在はいないものか……。

そこまで考えてハッとした。

1人だけ、任せることができる人物を思い浮かべたのだ。

ダイゴは急いで電話を起動する。

そこから即行で見つけ出したのは、自身の友人であるミクリの番号。

確か、今日の彼は予定はないはず……すぐに呼び出しを行なった。

すると、短いコールのあとに、ガチャリと言う音が聞こえ、「もしもし?」と聞きなれた声が鼓膜を揺らす。

「やぁ、ミクリかい? ちょっとお願いがあるんだ。え? 違う違う。今回は石のことじゃないよ。石以上に大切なこと。結論から言うと、しばらくホウエン地方のチャンピオン代理を任せられてくれないだろうか? 少し、ホウエン地方から離れないといけない用事ができてね。期間としては半年くらいなんだけど……」

それを合図に、ダイゴはミクリに要望を伝える。

大切な妹分。

愛してると言えるほど惹きつけられる女性。

そんな彼女がホウエン地方から離れてしまうため、それを追いたいのだと説明しながら。

「引き受けてくれる……? ありがとう!! 恩にきるよ!!」

するとミクリはダイゴの申し出を引き受けてくれた。

それに感謝を述べたダイゴは、一言二言言葉を交わしたあと、電話を切る。

表情には喜びが浮かんでいた。

「よし、これでアイカと同じ地方に行ける……。急いで準備をしないとね……!!」

それからの行動は早かった。

自宅にあるタンスから、何着か衣類を取り出して、必要最低限のものを荷物にまとめる。

まぁ、石が採れたら……と言うちょっとした気持ちもあるために、採石用の道具も用意しているが、今回のミュトス地方の遠征は、アイカ>>>>[越えられない壁]>>>>石といった感じなので、出番はあまりないと思われる。

「連れて行くのは……そうだな……メタグロスだけで大丈夫かな……。メタグロスナイトとメガストーンはちゃんと持っていけば、あとは特に気にする必要はない……と。キズぐすり系統や、状態異常回復はちゃんと持って……足りなくなったらフレンドリーショップで購入と。お金は……どれくらい持って行こうか……?」

着々と準備を進めるダイゴ。

そんな彼の腰にあるモンスターボールがカタリと揺れる。

そのボールは、彼が切り札としているメタグロスが入っているボールだ。

おそらく、主人の行動に呆れているのだろう。

だが、メタグロスも心を持つ存在。

そのため、主人であるダイゴの恋が実るようにと祈っている。

だから主人の行動を止めるつもりはなく、むしろ見守るつもりでいる。

そんなメタグロスの心境を知ってか知らずか、ダイゴはいくらかお金を引き出すために、銀行の方へと向かうのだった。




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