短編
□傘
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「あ、雨だ。」
「本当だ。結構降ってるね。」
打ち合わせが終わって建物から出ると雨が降っていた。
「今日は降らないって言ってたのになー。」
「本当だよー。」
「玲香は朝天気予報見る余裕ないでしょ。」
「バレたか。」
困ったことに二人共傘を持っていない。
わざわざタクシーを呼ぶには申し訳ない距離だけど、かといって傘無しで濡れて歩くには躊躇してしまうほどには降っている。
弱ったなと思っていると
「若!このビルの地下にコンビニがあるみたい!」と玲香が良い発見をしてくれた。
幸いにもコンビニがあり傘が売っていた。
「今年に入って傘買うの何本目だろー。」
「だから玲香はちゃんと天気予報をチェックしなって。」
家中が傘だらけになっちゃうーと言う玲香に対してある考えが浮かんだ。
「じゃあ、私が傘買うから玲香入っていきなよ。」
さすが若月ーと言いつつ玲香が渡してきた新作のチョコも一緒に買ってしまい我ながら甘いなと思う。
お会計を済ませて外に出ると雨は変わらず強く降っていた。
一本の傘に二人で入る。
「ちょっと若月スペース取りすぎ!濡れちゃうー。」
「玲香こそもうちょっとそっち行ってよ!私半分以上濡れてるって!」
二人でわーわー文句を言い合いながら歩いて行く。
こんな雨の中、1本だけ買うのを選んだのは私達らしいなと思った。