中編
□闇石さん(その3)
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忙しい仕事の合間を縫って今夜は玲香が出演する舞台を観に来た。
あの子が卒業してから初めての舞台。
お風呂好きの女の子の役とあってはだけた衣装も多い。
どの演者さんも素敵な舞台だけど美しいあの子にやはり目を奪われる。
ただの演出と分かっているのに欲情してしまう。
もうそれだけ私はあの子が欲しい。
終演後、席を立とうとした私はある人に声を掛けられた。
「まいやん!まいやんも来てたんだね」
若月が周りの人に気付かれないようにこっそりと声を掛けてきた。
「久しぶり。若も来てたんだ」
何も無い様に会話を繋げる。
でも、舞台中に斜め前の席に座っている若月には気付いていた。
そして若月も私と同じ目であの子を追っていたことも知っている。
若月も好きなんでしょう?玲香のこと。
「これから楽屋の玲香のところに行くんだけど、まいやんもどうかな?きっと玲香も喜ぶと思うよ」
「ごめんね。せっかくだけどこれから行かなきゃならないところがあって」
そう言って若月とは別れた。
でも、この後に予定があるなんて嘘。
玲香には会いたいけど、今会ってしまったらこの後の計画に響いてしまう。
そう思って私は一人劇場を後にした。