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今日は、お母さんが夜勤で帰ってこないって言うと
さやかちゃんはうちにご飯を食べにおいでって言ってくれた。


昼ごはんとか普通に食べてるところを見ると、悪魔でも普通に人間界のものを食べるんやなって思っていたけど
…家でもそうだよね?


「大丈夫や、変なもの食べてへんから」


そんな私の考えが読めたのか、さやかちゃんはクスッと笑った。
聞くと、基本的にあかりさんがご飯を用意してくれているらしい。
興味もあったし、あかりさんの料理とか美味しいに決まってる。お言葉に甘えてお邪魔することにした。

学校がおわってそのままさやかちゃんと帰宅する。


「かえったで〜」


「お邪魔します」


「おかえり、2人とも」


あいなさんが出迎えてくれた。
帰ったのは17時過ぎだったんだけど、ドアを開けたら既にいい匂いがしていて、期待に胸が膨らむ。


ガチャ


荷物をリビングに置いて、手を洗ってからダイニングに向かうと、期待通り、そこには美味しそうな料理が並んでいた。


「うわぁ!すごい!あかりさんの手作りですか?」



「そうやで!今日は和食にしてみてん。」


あかりさんは今にも食らいつきそうなさやかちゃんやりかさんを制しながら紹介してくれた。


「ほら!2人とも!いただきますするで!」


早く、早く、なんて、まるで子どものように急かすさやかちゃんをなだめながら
ぱんっとみんなで手を合わせた。


「あー、きしの、あれとって」


「あれじゃわからんし」


「えー、と、、ほら、その草」


「野菜って言え」


りかさんとさやかちゃんはコントみたいな会話を繰り広げてる。


「みゆきちゃんどう?」


「あ、はい!すっごく美味しいです!」


「よかったぁ」


なんか、本当に普通の食卓みたい。
いや、普通の食卓なんやけど、、、

この人たちが悪魔と天使だなんて思えない。

ほんで、料理はめちゃくちゃ美味しい。


「魔界や天界でもおんなじような食べ物食べるんですか?」


「まさかぁ!魔界にも天界にも魔物がおってな?討伐した魔物を食べるんよ〜」


あかりさんに目が絶品なんやで〜って可愛い顔して言われるとなんか余計にゾッとした。


「私たちは任務でこっち来ること多いからな自然と覚えるねん。」


あいなさんがもっくもっくと食べながら教えてくれる。


「へぇー…」


「さやかも料理うまいで!な?」


「まぁ、するっちゃする」


さやかちゃんは口いっぱいにご飯をつめてて、リスみたいで可愛い。


お昼ご飯はお弁当でみんなと一緒に食べるけど、お母さんと二人暮らしの私にとってこんな賑やかな食卓は初めてと言っても過言ではない。
家族が増えたみたいで、すごく居心地が良くて、嬉しかった。


ご飯を食べ終えて、
ご馳走になりっぱなしも悪いので、
あかりさんを手伝って2人で片付けをしている時


「っ!」


ふと、リビングを見るとそこにはおもむろに服を脱ぐさやかちゃんの姿があった。


あっぶな、お皿落とすとこやった…


こういう光景は普通みたいで、あかりさんは様子がおかしい私にどうしたの?って聞いてくれたけど理由まではわかっていないみたい。


気になるのでチラチラと目線を向ける。


うわぁ…割れてるやん、腹筋



「みゆき」


「へっ?!」


さやかちゃんが突然振り向いて、ぽーっと見惚れていた私に声をかけた。
お陰で変な声が出ちゃった。

そんな私をなんやねんって訝しそうに見ながら、さやかちゃんが手招きをする。


「ちょっときて」


「な、なに…?…わ!!」


バサァッという音と一緒に、さやかちゃんの背から翼が飛び出した。


「お手入れするねん。手伝って」


「お、お手入れ?」


「も〜…みゆきちゃん困ってるやん。突然裸で羽出して、お手入れしてくれって、それじゃ分からんやろ」

お皿を持ったまま立ち尽くす私に見かねたあいなさんが助け舟を出してくれた。


さやかちゃんはそう言われて口を尖らせてたけど、まぁ、そうかって納得したようで


「じゃあ、あいな教えてあげてよ」


なんて他人行儀なことを仰る。
あいなさんも、やれやれって感じで
恐らくあっちの世界の仕事をしていたと思われる手を止めてこちらに来てくれた。


「一応道具もあるねん。」


さやかちゃんが、ん、と差し出したジュラルミンケースをあいなさんが受け取って、説明を始める。


「これが初めに塗るやつで、磨くやつと、最後にツヤを出すやつ、、ほんで、ブラシと布を使って綺麗にしていく感じかな」


サッサっとさやかちゃんの羽をあいなさんは手際よく磨いていく。
さやかちゃんは気持ちがいいのか、目を細めてされるがまま。なんだか動物みたい。


「はい、みゆきちゃんもやってみて」


「あ、はい」


あいなさんにブラシを手渡されて
さやかちゃんの羽を梳かしていく


「っ…みゆき、くすぐったい!」


まだよくわかってないからか、さやかちゃんはくっくっと背中を揺らしながら笑った。


「えっ、ごめん…こう?」


「っちゃう!わざとやろ!」


「いや!そんなことない!」


ひーっひーって、笑うさやかちゃん。
だけど、振り払わないところが優しいよなぁなんて。


しばらく探り探りやっていると、ここが気持ちがいいんかな?とか、ここちょっと絡まってるっていうのがなんとなくわかってきた。


シャッシャッとブラシを通す。
翼って意外と柔らかいんやなぁ、、
見た目は固そうだけど、案外触っていて気持ちがいい。


さやかちゃんも気持ちよさそう。


あいなさんに教えてもらいながら最後にツヤだしをしてお手入れを終えた。


「あー、スッキリした。ありがと」


さやかちゃんは、満足気に笑った。


「あ!なにー、さやか、みゆきちゃんにお手入れしてもらったん?」


「うん。」


「さやかも隅におけんなぁ」


「そりゃ、覚えてもらわんと。」


翼をお手入れすることが大切なのはなんとなく想像つくけど、それ以上に何か意味がありそうなその会話。分からないのがむずがゆい。


「翼のお手入れになんか意味があるんですか?」


そう尋ねると、あいなさんがこちらをみて優しく微笑んだ。


「このお手入れはな、家族か恋人がする習慣があるねん。」


小さい時は家族で、大人になったら恋人にしてもらうのが普通やなぁ
って、あいなさんはニヤニヤしながらさやかちゃんに視線を送った。


さやかちゃんは、うっさい、言わんでいいとか言いながら、少しだけ頬を赤らめてた。


まぁ、そんなことだろうとは思ったけど、改めてさやかちゃんに認められたようで、嬉しかった。


知らなかった一面を知ることがこんなに嬉しいことだとは知らなかった。それがさやかちゃんだから。
こっから、さやかちゃんのいろいろなことがわかっていって、私もさやかちゃんにいろんな部分をさらけ出していくんや。


嬉しいこの気持ちをなんとか伝えたくて、出しっ放しの翼を撫でてあげると、
さやかちゃんは少し驚いたように振り向いて、照れ笑いをしながら気持ち良さそうに目を瞑った。
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