一章 出会いと告白
□五 決意
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ガラッシュの村 広場
ラースは先程祈りをした場所に座り込んでいた
ラース「............」
ザッザッ
ラース「....」ブンッ!
ラースは態勢を瞬時に変え、背後から近づく人に足を振り上げた
二人「!」
ラース「おっと!!すまない、マルティナ、イレブン。今、考え事をしていたんだ」
ラースは二人に足が当たる前に止めた
マルティナ「いえ、私達の方こそ突然ごめんなさい。夜も遅くなってきたし、どうしてるかなと思って」
ラース「少し、昔の事を思い出していたんだ」
マルティナ「そう........近くに座ってもいい?」
ラース「いいぞ」
二人はラースの近くに座った
三人「.......」
しばらく沈黙が続き
イレブン「ん?あそこにあるのは....命の大樹の根っこだね。マルティナとラース、ちょっと来てもらっていい?」
二人「??」
二人はイレブンに言われるままについていく
ガラッシュの村 奥地
そこには命の大樹の一部である根っこが出ていた
ラース「!おい、イレブン。手の痣が光ってるぞ」
ラースはイレブンの左手の痣が光っている事に気づく
イレブン「やっぱり反応した。あのね、僕のこの手で大樹の根っこにかざすと、過去の出来事を見る事ができるんだよ。試してみるね」
イレブンが左手を根っこに近づけると三人の頭の中に映像が流れこんできた
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ガラッシュの村 広場
魔物達「ホメロス様、村の者共を全員集めました」
魔物により村の全員が集められていた。村人は全員怯えるように魔物達を見ている
ホメロス「うむ。貴様ら、単刀直入に聞こう。オーブと勇者の関係について知っているな?」
村長「何をおっしゃるのです。私達が知るわけないに決まってるじゃないですか。私達を解放してください」
村長が前に出てホメロスに向かって話した
ホメロス「フン、あくまでもシラを切るか。愚か者め。私達は魔王ウルノーガ様より、この村は勇者の事を代々調べていると言われたのだ。隠した所で無駄な足掻きだ」
村長「............わかりました。はい、私の祖先は代々勇者とオーブについて調べておりました。あなた様の知りたい事は、私が知っている事であれば何でもお教えしましょう。ですから、村の者だけはどうかお助けを」
村長は悩んだ末に村の全員を救う事を条件にして、話す事を決めた
ホメロス「私が知りたいのはオーブのありかだけだ。さっさと吐け」
村長「........申し訳ありません。村の秘宝シルバーオーブは、昔に幽鳥の渓谷に住むといわれるごくらくちょうに奪われてしまいました」
ホメロス「まだ嘘をつくか!ウルノーガ様はこの村にあるとおっしゃったのだ。そんな嘘に騙されると思うな。そこまでして隠したいならば黙っているといい。お前ら村に火を放て」
村民達「!?」
村人達はその言葉に顔が青ざめる
魔物達「へい。お前ら、火をつけろー!」
ゴオオオッ!
魔物達により、家々や木などが容赦なくどんどん燃やされていく
ドスン!
家が焼け落ち、広場にある神木様にまでも火が燃え移っていく
村民達「あ....ああ、そんな」
村人達は絶望した表情でそれを眺めていた
ギルグード「てめえら!!黙って聞いてりゃ勝手な事しやがって!」
ギルグードは我慢ならずに大剣を構え、火を点ける魔物に向かっていく
村長「やめるのじゃ!ギルグード!!」
ギルグード「!!?何でだよ!村長!こいつら....」
村長はギルグードに怒鳴り、斬りかかろうとするのを止めさせた
村長「すまぬ。言うことを聞いておくれ。シルバーオーブはこの村にはもう無いのです。どうか、信じてください。この通りじゃ」
村長はホメロスの前で土下座をした
ホメロス「.....もうよい。貴様が吐かぬなら他の者に聞こう。消えろ」
ザシュ!
ホメロスにより、村長は斬られた
村民達「村長!!」
ギルグード「てめえ!!!」
ギルグードはホメロスに斬りかかるが、闇のオーラがホメロスを覆い防がれる
ガキン!
ギルグード「ぐっ........ふん!な、なんだよ、これ。押しても斬ってもビクともしねえ」
ホメロス「フン。ただの雑魚が私に傷が付けられるとでも思っているのか?では、一人一人聞いていくとしよう。知らないなら、最初の計画通り全滅させるだけだ」
ホメロスと魔物達は村人を追い始めた
村民達「逃げろー!!!」
村人達は恐怖で全員が逃げ惑い始めた
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イレブン「......ここで終わりみたいだ」
頭に送られてきた映像はここで途切れていた
マルティナ「ホメロス.....どうして魔王の言うことを聞いているの?」
ラース「......今のは俺が来る前の出来事....か.....」
ラースは顔を暗くしている
イレブン「うん。そうだと思う。ごめん、ラース。つらいものを見せてしまって」
ラース「いや、イレブンは悪くない。それに色々知ることができたからな、ありがとう。さっきの場所に戻っていいか?イレブン達.......いや、勇者様達に話したい事がある」
ラースは決意したような真っ直ぐな目で二人を見ていた
ガラッシュの村 広場
ラースはイレブン達にゆっくりと村での事を話し始めた
ラース「俺は10年前まで、ここで村の守人になるためにギルグードと毎日模擬練習をしていたんだ。
俺は魔法こそあれど、力ではあいつに敵わなくてな。村の人からもあいつの方が頼りにされていたんだ。だから、俺は村の守人になるならあいつだと思っていたんだ。
でもギルグードはある日、広場の木の下で「お前は俺のライバルだ。だが、親友でもある。お前は俺についてこれる。だから2人一緒に村の守人になるぞ」と約束したんだ」
イレブン「ギルグードはいい人だね」
マルティナ「ギルグードはラースと一緒に村を守りたかったのね」
ラース「ああ。俺はその約束が嬉しくてな。絶対に叶えてみせようとその日からさらに努力したんだ。
だけどその2週間後、俺は村長に呼ばれて、この村に伝わるシルバーオーブについて研究した結果、勇者に必ず必要な物であることがわかった。
さらにこれは悪しき者の手に渡ると雷の如き力を得ると言われた。村長は俺にシルバーオーブを託し、俺を村一番の戦士と認め、世界のどこかにいる勇者を見つけた後この村に連れてきて、オーブに相応しい人かどうかを見極めろという任務を与えたんだ」
イレブン「!!」
マルティナ「じゃあ、ギルグードとの約束は....」
ラース「守れなくなってな。その事実が俺には苦しくて、俺のじいちゃんにもギルグードにも言えずに、次の日勇者を探す旅に出たんだ」
イレブン「じゃあ..... ラースは僕をずっと探していたのか」
ラース「ああ。もう村長も村そのものも無くなってしまったが、村の宝シルバーオーブと使命だけは、まだ残ってる。
だからイレブン、いや勇者様。明日の昼、この場所で勇者様達のパーティーの力、村一番の戦士ラースが試させてもらいます」
二人「!!?」
イレブンとマルティナは同時に息を呑んだ
ラース「仲間達にも伝えておいてくれ。本気でいくぞ、と」
ラースの目は真剣そのものだった
イレブン「......わかった」
マルティナ「イレブン!」
ラース「それじゃあまた明日な」
そして夜が明けた