一章 出会いと告白
□八 真実
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ロミア「イレブンさん、最後まで私のわがままを聞いてくれて本当にありがとう。お礼の品は白の入り江に置いてきました。直接渡す事ができなくてごめんなさい。
私もういくわ」
ロミアは決心したように言い、ベールを頭に被せた
ラ〜〜
悲しげな人魚の唄が、しじまヶ浜に響き渡った
その唄は、人魚が禁断としている自身の体に足を生やす唄
マルティナ「!!ロミアに足が!」
ロミアの人魚であった魚の鱗がついていた場所は光り輝き、人間の足に変化した
ザッ....ザッ....
初めてで慣れない足を必死に動かしながら覚束ない足取りで、ロミアはキナイの墓へと向かう
ロミア「........ずっとまっていたわ」
たどり着いたボロボロの墓を抱きしめ、静かにキスをひとつ
そして、ロミアは海に戻っていく
ロミアはどうしてもキナイに会いたいのだろう
ロミア「.....あっ!」パシッ
転びそうになるロミアをキナイが掴む
ロミア「......手は....キナイと同じ手をしているのね。
陸に上がった人魚は、泡となり消える。それが....人魚のオキテ。最後にキナイと会えてよかった。
もしわたしが人間だったなら、キナイと共にいきられたのかしら
....さようなら」ザバァァン!
ロミアは海に沈んでいくと泡となって消えていき、ベールだけが水面に残った
キナイ「あの姿....どこかで見た事がある....確か祖父の小屋に!」
小屋内
一枚の絵に布が被せてあった
キナイ「あった!これだ!」バサッ!
ラース「この絵は!ロミア!」
その絵は暗く綺麗な月夜が浮かぶ背景に、ロミアが約束のベールを頭にかぶせた姿が描かれてあり、まるで先程のロミアを描いているようである
マルティナ「........この挟まっているものは手紙?」
マルティナは絵の後ろに手紙が挟まっている事に気づく
キナイ「祖父の......手紙だ」
愛する人へ
君に助けられたあの嵐の日から、君を迎えに行く事だけを支えに生きてきた。それももう、終わりにしようと思う。すまない。俺は約束を守れそうにない。
あれは、俺が村を追われて数年後の事だ。ひどい大嵐でたくさんの犠牲が出た。その数日後、しじまヶ浜の崖の上に赤ん坊を抱いて立っているかつての嫁がいた。あいつは生きる希望を失っていた。
大きな悲しみを抱えたあいつに、俺の声は届かなかった。彼女は俺の目の前で海に飛び込んだんだ。俺はどっちも助けようとしたが、助けられたのは赤ん坊だけだった。
この子には俺が必要だ。俺のような人が出ないように、人魚の呪いとして村に残すことにする。君の仲間を貶めるようなみんなの言葉を許してほしい。
君はまだ、あの入り江で俺を待っているのだろうか。俺はもう君を迎えに行く資格がない。だが、これだけは信じてほしい。
君を愛している
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ロミア「キナイ、本当にもう体は大丈夫なのね?」
キナイ・ユキ「ああ、もう平気さ!」
ロミア「キナイ、私はいつまでもここであなたを待ってるわ」
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キナイ「今までの無礼を許してくれ。ロミアに会わせてくれて、どうもありがとう。俺は人魚に取り憑かれたじいさんを心の中で恥じ、憎んでいたんだ。
だが、じいさんの気持ちが、今ならよくわかる気がする。
恋を.....してしまいそうだった」