二章 崩壊した世界と誓い
□四 ドゥルダ郷
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次の日の夜、ドゥーランダ山 キャンプ場
イレブン「勇者とゆかりのある人達、か。北にある聖地ラムダのような人達なのかな」
グレイグ「俺は王に入っていたウルノーガに、ドゥルダ郷との間に関所をおけと言われていた。魔王が恐れていたほどの力があるのかもしれない」
さらに次の日、ドゥルダ郷
グレイグ「ここが勇者ゆかりの地か。しかし、大樹が落ちた場所から近いというのに郷は全く無事な様子。一体何が....」
その時、郷の入り口にいた男性が話しかけてきた
郷の男「その顔、見覚えがあるぞ。さては貴様、デルカダールの者だな。今まで我が郷を封鎖しおって、忌々しい。我らドゥルダの民の怒りを思い知れ!」
そう言うと男性達は数人でイレブン達を囲み、不思議な動きを始めた
グレイグ「むむっ。何だこの動きは。どこから攻撃が飛び出すかわからん。イレブン、油断するな」
その時、奥から大きな声が聞こえてきた
???「お前達やめなさい!騒がしいと思って来てみれば何事ですか。郷の外の方に無礼は許しませんよ」
男「サンポ大僧正!違います!怪しいデルカダール兵が来たので調べていたのです」
そこには小さな坊主姿の男性がいた
サンポ「デルカダール兵ですって?.....なるほど、確かに。ですが、あちらの若い方は兵士には見えませんね。.....!?あ、あなたから感じるこの力は!?も、もしや勇者様ではありませんか?」
イレブン「う、うん。僕は勇者だよ」
グレイグ「なんと、一目見ただけでお前の素性を見抜くとは」
サンポ「ああ、どれだけこの時を待ちわびたか。この者達の無礼な振舞い、大変申し訳ありませんでした。後ほど、郷の一番高い場所にある大師の宮殿を訪ねてください。お話ししたい事があります」
サンポはそう言うと立ち去っていった
グレイグ「変わった子だな。まだ年若いというのにこちらの心を見透かされる様な、不思議な力を感じる。他にアテもない、とりあえず大師の宮殿に向かおう」
男「丁重に迎えるはずの勇者様に、大変無礼な態度をとってしまいました。何ともお許しください」
先程囲んでいた男性達は丁寧にイレブンに頭を下げている
イレブン「大丈夫だよ、仕方ない事だからあまり気にしないでね」
大師の宮殿
サンポ「勇者様、よくぞドゥルダ郷へ参られました。私は郷を治める大僧正サンポと申します」
グレイグ「サンポ大僧正。ドゥルダの人々はイレブンの事を知っているのか?」
サンポ「もちろんです。我々は、16年前イレブンさんがユグノアに生まれてからずっとその訪れを待っていました」
イレブン「僕を待ってたの?どうして?」
サンポ「訳をお話ししましょう。あの旗を見てください」
サンポの上にある緑色の旗にはある国の紋章が描かれている
イレブン「あ、これユグノアの紋章の旗だよ」
サンポ「ドゥルダは、古来よりユグノアと縁のある郷。ユグノアの王家に生まれた男子は、幼子の6年間、郷に修行に出されるという掟があります。
ユグノアの王子として生まれたイレブンさんも、本来は郷に修行に出され、ニマ大師に師事するはずだったのです。不幸にも、ユグノアが魔物に滅ぼされ、それは叶いませんでしたが」
グレイグ「もし運命が違っていれば、イレブンはこの郷で幼少期を過ごしていたのだな。しかし、その師匠になるはずだった肝心のニマ大師はどこに?」
サンポ「我らの指導者ニマ大師は世界が魔王によって崩壊した時、その衝撃から郷を守るため、巨大な守護方陣を展開しました。その強力な結界によって郷は助かりましたが、命を犠牲にしたニマ大師はそのまま帰らぬ人となったのです」
グレイグ「そうだったのか。ニマ大師はこの郷を守るため犠牲に....」
サンポ「ニマ大師の代わりに、イレブンさんに見せなければならない物があります。宮殿の裏にある大修練場まで来てください」
大修練場
サンポの前には大きな扉がある
サンポ「この扉の先がドゥルダの大修練場になります。実際に修練場を見る前に、郷に語り継がれる伝説の勇者ローシュの伝承についてお話ししましょう。
神話の時代、ローシュは邪悪なる神を倒す旅の途中、賢者の集まる神秘の郷ドゥルダを訪れました。深き知恵を持つ郷の初代大師テンジンに弟子入りしたローシュは、この修練場で力を磨いたと伝えられています。
そして修行を続けるローシュはある人物と、運命的な出会いを果たしました」
グレイグ「ほう.....その人物とは?」
サンポ「同じく大師の元で修行に努め、弟子の中でも一番の実力者とされた大魔法使いウラノスです。共に切磋琢磨し、互いの力を認めあった二人は意気投合して友となりました。
修行を終えた後ウラノスはローシュの仲間となり、邪悪な神との戦いで大いに活躍したと伝えられています。その石碑には二人が友情を誓い、邪悪な神を倒す事を決意した言葉が刻まれています」
グレイグ「ローシュとウラノスか。大変興味深い言い伝えだな」
サンポ「昔語はこれくらいにして、実際に修練場をお見せしましょうか。私について来てください」
サンポは扉を開け、イレブン達を中に入れた
サンポ「ここが歴史深きドゥルダの大修練場。神話の時代からある場所で、鍛錬した者の血と汗が染みついています。イレブンさんも歴代のユグノア王子と同様に、ここでニマ大師の稽古を受けるはずでした。
わざわざここに来ていただいたのは、ローシュの時代から続く伝統の地をイレブンさんにも踏ませてあげたかったからです。あなたの祖父ロウ様もここで修行を受けたのですが、彼の偉業は今も皆の記憶に残っています」
イレブン「偉業?おじいちゃん、すごい事したの?」
するとサンポはどこからか棒を取り出した
サンポ「ニマ大師の修行は厳しい事で有名です。これは弟子がオイタした時にお尻をたたく、通称お尻叩き棒。なんとロウ様は、6年間の修行でこの棒でお尻を叩かれる事1万回!
この記録は未だ破られる事なく、ロウのようになることなかれ、という戒めが今も語り継がれているのです」
イレブン「......」
それを聞いたイレブンは微妙な顔を浮かべている
グレイグ「.....大した偉業だな」
グレイグも少し呆れている様子だ
サンポ「ロウ様が心配ですか?ですがあの方はニマ大師の厳しい修行を耐え抜き、今も伝説の弟子として語り継がれる方。世界崩壊の衝撃で亡くなるほどヤワではありません。きっとどこかで無事でいます。
今日はイレブンさんのために、ささやかながら宴を開かせてください。ニマ大師がいない今、私達に出来る事は多くありませんが、イレブンさんのために出来る限りの事をしたいのです」
こうして郷を訪れたイレブンのためにその夜ささやかな宴が開かれ、修行僧達は久しぶりの宴を大いに楽しんだ。
そして、夜が明けた
イレブン「おはよう、グレイグ」
グレイグ「目が覚めたか、イレブン。せめてニマ大師が生きていれば、魔王を倒す手がかりを得られたかもしれないな。まあ、過ぎた事を言っても仕方がない。そろそろ行こう」
イレブン「まあそうだよね。わかった」