一章 出会いと告白

□八 真実
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ベロニカ「ええ!?何言ってるのよ!ナギムナー村のキナイと言えば、アナタしかいないじゃない!まさか今さら人魚との結婚が嫌になったとか言わないでしょうね?」


ベロニカは驚き、責めるような口調で言う


キナイ「おい、お嬢ちゃん。この村では気安く人魚と言わない方がいい。あんたらが探してるキナイってのは、俺の祖父のキナイ・ユキのことだ。あんたらは人魚の呪いを知ってるか?」


ラース「その話なら、君のお母さんに伺った。だが、現実とはあまり思えなかったな。俺らは実際にロミアという人魚に会っているし、現に今も君を待ち続けていたしな」


キナイ「その話に出てくる漁師が俺の祖父、キナイ・ユキのことだ」


四人「!!」


キナイ「あの話は50年前、この村に実際に起こった事なんだ。教えてやるよ、あの話の続きをな。


漁師が村を追われ10年が経ち、村長の娘は別の男と結婚し子どもを授かった。人魚の呪いも、漁師の事も記憶から薄れていった。


そんなある日、村の漁船があの時以上の嵐に巻き込まれた。その嵐により娘の夫と村長が亡くなった。そしてその後を追うように、娘と子どももいなくなった。


村人達は噂した。キナイ・ユキを手に入れられなかった人魚の呪いだ、と。村人達は祖父を問いただそうと手に松明を持ちしじまヶ浜に向かった。その時、村人達は信じられない光景を見た。


一人でいるはずの祖父が、ずぶ濡れの赤ん坊を抱えて立っていたらしい。村人達はその赤ん坊を人魚の子だと恐れ、いっそう祖父を避けて暮らすようになった、というわけだ」


マルティナ「....」


ベロニカ「じゃあ、アンタのお母さんは人魚の子なの?それならアンタも人魚の....」


キナイ「バカを言うな!俺の母は人間だ!あの海辺に捨てられていた赤ん坊を、祖父が引き取って育てたんだ。


人魚の子などとバカらしい噂は村のやつらが勝手に言っているだけだ!
いい機会だ。人魚が祖父を待っているというなら、そいつに渡してほしいものがある。


村の反対側にあるしじまヶ浜に来てくれ。教会の裏の扉を通ればすぐだ。鍵はあけておく」


しじまヶ浜


キナイ「このベールは俺の祖父が残したものだ。母が言うには、祖父が死んだ時、握りしめていたらしい。


俺はどうしても捨てられなかった。あんたらの話が本当なら、その人魚に渡してキナイ・ユキは死んだと伝えてくれ」


イレブンは約束のベールをてにいれた


キナイ「さっきは取り乱してすまなかった。俺達家族がこの村で暮らしていくのは楽な事じゃない。


俺の母は、祖父が死んでからやっと結婚できた。色々あっただろうに、今じゃそれを紙芝居にしてお金稼ぎをしている。強い人だろ?」


ラース「そうだったのか。何も考えずに悪かったな」


キナイ「俺は人魚が憎い。俺の子孫にはもう、人魚の呪いで蔑まれるような人生は送ってほしくない。ようやく俺も船に乗れるようになったんだ。これ以上、過去の呪いをむし返さないでくれ」
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