一章 出会いと告白
□九 事情説明
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少しオリジナル展開を挟みます
ラース「セレン様。俺らがここに来る時に潜った光の柱は他のところにもあるのか?」
セレン「その通りです、ラース。他の光の柱を使えば、今まで行けなかった所にも行けるようになるでしょう。他の光の柱の場所と出る場所は地図に記しておきましょう。
ですが、このムウレアに来るにはあなた方が潜ってきた場所からしか来れません。それとあなたはもう少し、自分の気持ちに正直になった方がよいと思いますよ」
ラース「!?いや、どういう事だよ」
セレンの不思議な指摘にラースは驚く
セレン「ふふ、まだその時ではないようですね」
セレンはラースに意味ありげに微笑んだ
ムウレア王国 広場
ベロニカ「さてと、次はどこに向かうか決めましょう」
カミュ「そうだな。さっき付けてもらった印によると、西にある光の柱を通って行くとプチャラオ村の近くに出るみたいだ。ひとまずはそこで情報を集めてみないか?」
イレブン「わかった。まずは西にある光の柱の方にいってみようか」
船 内部
光の柱に到着するしばらくの間、船の中で各々が休んでいた
シルビア「ラースちゃーん、こっちにきてもらっていいかしら?」
シルビアは部屋から出てきたラースに声をかける
ラース「ああ、どうした?って女子達全員いるんだな。こんな中に入っちゃってもいいのか?」
ラースが食堂に行ってみると、テーブルにはベロニカ、セーニャ、シルビア、マルティナが座っていた
マルティナ「大丈夫よ。あなたが旅に加わってから私達の深い事情を話していなかったから、今話そうってなったのよ」
ラース「別に俺は気にしないが?」
シルビア「んもう!そういう事じゃなくて、これからに関わる事だから知っておいてほしいの!」
ベロニカ「まず、私達姉妹の事なんだけどアンタ、私の事セーニャの妹だと思ってるでしょ?」
ラース「?何だ、違うのか?」
ラースは何も間違ってないかのように答えた
ベロニカ「違うわよ!私がセーニャの姉なの!」
セーニャ「色々と事情がありまして、お姉様は魔力を魔物に吸われてこのようなお姿になってしまったのです。本来なら、私と同じ年齢ですわ」
ベロニカ「そっ!だから頭と精神は大人なんだから。子ども扱いするのはやめてほしいわ!」
ベロニカは少し誇らしそうにしている
ラース「なるほど、そうだったのか。悪かったな。次からは気をつける」
マルティナ「次は私ね。ラース、黙っていて申し訳なかったのだけど、実は私は16年前に亡くなったと言われているデルカダールの姫なの」
ラース「ああ、それなら何となく気付いてた」
マルティナ「それでね、ロウ様も.....え?ちょっと待って?気付いてた!?」
マルティナはラースがなんでもないかのように言った言葉にかなり驚いている
シルビア「ラースちゃん、気付いたってどうやって?」
ラース「いや、5年前に会った時にロウって名前を聞いて、確かユグノア王国の前王の名前だと思ってな。その方が姫と呼んでいたからきっと本物の姫だろうと予想したんだ。
そこからユグノアといえば16年前、あの時だと11年前か。あの悲劇の事を思い出して、あの場には偶然来ていたデルカダールの姫も亡くなっていたはずだが、デルカダール国王がおかしくなったのもあの頃から言われ始めたからな。
あの発表が嘘だと考えるなら、もしかしたらマルティナはデルカダールの姫なのでは?と予想していたんだ」
マルティナ「........」
マルティナは呆然としている
ベロニカ「すごいけど、名前だけでそこまで普通考える?」
ラース「一応ただの旅人にしては振る舞いや動作がやたらと優雅だった。普通に暮らしてたなら出来ない動きだな。あの動きは貴族とかに住んでいないと知らない動きだ。そこに違和感を覚えたってのが始まりなんだけどな。
だが、それまではただの仮説でしかなかったんだが、前に俺の村でホメロスがギルグードを殺した時に、マルティナに向かって姫様と呼んでいた。
ホメロスといえばデルカダール王国の将軍の一人。その人が姫と呼ぶのだから間違いないだろう、とそこで確信したんだ」
セーニャ「ラース様、素晴らしいですわ。探偵の方みたいでした」
ベロニカ「(貴族に住んでいないと知らない動き.......。それなら、なんでただの村に住んでいたアンタがそんな事を?)」
シルビア「でも、ロウちゃんが王様だった頃なんてずっと前よ。ラースちゃんだって生まれる前なはずだわ。どうして他国の前王の名前まで知ってるの?」
ラース「ガラッシュの村は宝であるシルバーオーブを調べてたって話はしただろ?その関連で勇者ってのは必ず出てくる言葉だった。だから勇者についてもよく調べていた。
16年前、村長は勇者がこの世界のどこかで誕生した事を探知した。村長はきたる時に備えて、勇者を守るような方針にしている国を調べた。その時にユグノア王国も調べたってわけだ」
シルビア「な、なるほどね。ちょっとマルティナちゃん?大丈夫?」
マルティナ「.....私やロウ様の気憂は一体」
マルティナはため息をつきながら頭を押さえている
ラース「まあ、バレたくなかったのはこっちもわかってた。そんなのホイホイ言える事じゃないからな。でも、言ってくれてありがとな」
マルティナ「あなたは本当に頭が回るのね。ロウ様にもお伝えしておくわ」
シルビア「それでね、今度はイレブンちゃんの事なんだけど」
ラース「おい、本人いないけどいいのか?」
ベロニカ「本人にはちゃんと確認とってきたわ」
ラース「そうか、それで?」
マルティナ「あの子は実は、ユグノアの王子でロウ様の孫なのよ」
ラース「何だって!?男にしては綺麗だと思ったが分からなかったな!あれ?このパーティー王族の割合おかしくないか?俺、敬語の方がいいのか?」
ラースは驚き、焦り始める
マルティナ「ふふ、普通でいて大丈夫よ。変に畏まられるとこっちも固くなっちゃうわ。それに、私は姫よりももう旅人としての生活の方が長いしね」
シルビア「それにね、このパーティー若い子が多いから、ラースちゃんは今最年長クラスよ。そんな子が敬語なんてしなくてもいいのよ」
ラース「え?俺今27なんだが、これで最年長クラスなのかよ!もしかして....この年齢はもうおっさんなのか?」
ラースは少しショックを受けている
セーニャ「大丈夫ですわ、ラース様。私はお兄様みたいな感じだと思っておりますわ」
ラース「喜んでいいのか?それは?....ハァー、何だか色々知って疲れたな。俺は甲板の方に行くよ。ありがとな」
シルビア「またお話しましょうね〜」
甲板
ラースが食堂から甲板に出るとそこにはカミュがいた
カミュ「お、ラース、随分賑やかだったな。もう少しで光の柱に着くみたいだぜ」
ラース「ああ、わかった。ありがとな、カミュ.....
なあ、知ってたか?27っておっさんかもしれないんだってよ」
カミュ「何話してたか知らねえが、ラースはまだおっさんってほどじゃねえだろ」
ラース「そうだよな。まだ...若いよな」
ラースは少し遠い目をしながら呟いていた