蝶屋敷短編

□開花までもう少し
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『お、いたいた。』



庭に行くと、カナヲが蝶と戯れていた。
いつまでも見ていたいくらい絵になる。
カナエとしのぶが人買いから無理矢理奪って連れて来たと聞いた時はどうなる事かと思ったけど…立派な継子になって。



『カナヲ』



一瞬、少しだけ驚いた表情をしたけど、いつもの表情に戻るとお辞儀をして私の横を通り過ぎようとする。
私はその腕を掴んで引き留める。



『そう何度も逃がすわけないでしょ(笑)』



カ「……。」



『ちょっとあっちで話そうよ。』



人が来たら話しにくいかもしれないと思い、誰も来なさそうな物置裏に来た…は良いけど、何かこれはこれで場所的にアウト?
まぁ、何かあれば事情を話せばいっか。



『さてと…単刀直入に聞くけど、カナヲはどうして私を避けるの?』



カナヲはゴソゴソとポケットから銅貨を出すと、指で弾いた。
くるくると宙を舞う銅貨を横から私がキャッチする。



カ「あっ…。」



『銅貨で決めるのはだーめ。ねぇ、どうしてカナヲは自分の意思で決めないの?』



カ「……何もかも、どうでもいいんです。何も感じないので。」



『ふーん…じゃあ、鬼殺隊に入ったのも自分の意思じゃないんだね。だって、何もかもどうでもいいって思ってるなら、人が鬼に殺されようが食われようがどうでもいいもんねぇ。』



カ「…っ!!そ、それは…違います!!私は、カナエ姉さんや師範のお役に立ちたくて!!鬼に襲われる人を助けたいと思って!!」



突然、声を荒らげるカナヲに少し驚く。
それはカナヲも同じだった。



『なんだ、ちゃんと言えるんじゃん。自分の気持ち。』



カ「あ……え…と、あの…。」



『ごめんね、意地の悪いこと言っちゃって。カナヲが生半可な気持ちで入隊したとは思ってないよ。これでも一応、カナエとしのぶと一緒にカナヲの成長を見てきたつもりだよ?』



そう言って頭を撫でると、
カナヲは俯いた。



『もっと自分の気持ちを大事にしないとね。誰も迷惑だとか思ったりしないから。あと、最後にこれだけ聞かせて?』



カ「?」



『カナヲは私のこと、嫌い?』



カ「…え、いや…嫌い、では…。」



『なら好き?』



カ「えーっと…。」



『私は好きだよ、カナヲのこと。』



カ「…へっ?//」



カナヲが顔を真っ赤にする。
こんな表情は初めて見たかもしれない。



『ふふっ、カナヲに嫌われていないって事がわかったから良しとするか!じゃあ、そろそろ私は帰るから。時間取らせてごめんね、また今度話そう。』



私はカナヲの手を取り、銅貨を渡す。
カナヲはその銅貨をじっと見ていた。



『次に私と話す時は、銅貨に頼らないようになっててね(笑)あと、今日の返事も聞かせてね。』



カ「今日の…返事…」



『言ったでしょ?私はカナヲのことが好きだって。私は本気だよ?』



カ「/////」



じゃあね、とカナヲに背を向けて
蝶屋敷を出る。
帰り際、しのぶに「ご機嫌ですね」と笑われてしまった。



『カナヲのあんな顔見たら期待しちゃうなぁ…。次はいつ会えるだろう。』



先程の真っ赤になったカナヲを思い浮かべて空を見る。



カナヲの心が花開くまで、あと少し…。
ゆっくりでいい、いつかカナヲの心に綺麗な花が咲きますように。
そして、花開いた彼女の横にいるのが私でありますように。













…終わり
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