蝶屋敷短編

□気づいたら
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『「!?」』



話しながら歩いていると、
空気が重くなった。
鬼の気配がする。
海麗さんと同時に日輪刀に手を掛ける。



"…パキッ"
っと背後から音がする。



し「蟲の呼吸 蜂牙ノ舞"真靡き"」



素早く振り返ると、
鬼の頭に日輪刀を突き刺す。
それを皮切りに、各方向から鬼が姿を現す。



し「蟲の呼吸 蝶ノ舞"戯れ"」



順調に鬼を倒していく。
海麗さんを見ると、
3体の鬼に囲まれていた。
しかし、本人は焦る様子などない。



「ウゥゥガァァァ!!」



1体の鬼が攻撃を仕掛ける。



『氷の呼吸 参ノ型"氷壁"』



日輪刀を振り上げると、氷の壁が現れる。
鬼の拳は壁を割ることが出来なかった。



『氷の呼吸 弐ノ型"暴風雪氷"』



竜巻のように雪と氷が舞い上がる。
同時に3体の鬼の首が飛んでいた。



し「す、凄い…。」



2人で全ての鬼を倒し切る。
海麗さんは怪我どころか
息さえ切れていない。



『鬼の首が…切れていない…?』



し「大丈夫ですよ。毒を打ち込んだので、もう死んでいます。」



私の倒した鬼を見て、海麗さんが不思議そうに呟いたので毒で殺した事を教える。



『毒…?その日輪刀は…。』



し「私は見ての通り小さいので、鬼の首を切る力がないんです…。だから、この日輪刀は首を切るのではなく、毒を打ち込む刀なんです。」



そう言って、日輪刀を抜いてみせる。
海麗さんは興味深そうに日輪刀を見ている。



『これで毒を…。』



し「はい。私、突く筋力は強いみたいで。毒は鞘の中で調合して、鬼によって変えています。」



『しのぶは凄いね。』



し「え…。」



『毒の調合は、緻密で繊細な作業だ。それを戦いながら、鞘の中で行うなんて誰にでも出来る所業じゃない。しのぶは強いね。』



海麗さんの言葉で涙が出た。
嬉しかった、姉さん以外の誰かに認めてもらえたことが、とても嬉しかった。
首が切れないのが悔しかった。
けど、こうして自分の戦い方を見つけて認められた。
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