蝶屋敷短編

□気づいたら
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しのぶside



その人は、凛としていて美しかった。
一目見た瞬間に心を奪われた。



最初は姉さんからの話でしか
聞いていなかった。
その人は、不破海麗という。
姉さんと同じく鬼殺隊の柱で、柱合会議の時くらいしか鬼殺隊本部に姿を現さなかった為、姉さんですら会うことは少なかった。
だけど、姉さんは不破さんとは仲良しらしい。



カ「海麗はとても強いのよ?そして、本当に綺麗な人なの。だけどね、ちょっと愛想が悪いところもあってね。仲良くなれるまで大変だったわ(笑)」



し「姉さんはよくそんな人と仲良くなろうと思ったわね…そっちの方がびっくりだわ。」



カ「ん〜?だって綺麗だし、戦ってる姿がかっこいいんだもの〜!今度、機会があったらしのぶにも紹介するわね♪」



はぁ…と溜め息をつく。
姉さんのこのおっとりさはどうにかならないものか。



ある日、柱合会議の為に本部に向かう姉さんについて行った。
本部からそのまま一緒に任務に向かう為だ。



カ「あら?あそこにいるの海麗じゃないかしら?海麗〜!!」



姉さんが前を歩く不破さんを呼ぶと、その声に気づき足を止め振り返った。
高い位置から1本に結ばれた長く綺麗な漆黒の髪、吸い込まれそうなほど深い蒼色の瞳、スっと通った鼻筋、姉さんから聞く以上の美しさに息を飲んだ。



カ「久しぶりね〜!元気だったかしら?」



『あぁ。』



不破さんはそれだけ言うと、
視線を私へと移した。
途端に、緊張で体がこわばる。



カ「この子はいつも話してる私の妹よ。本当に可愛いでしょ〜?」



いつも話してるって何!?
私の何の話をしてるのよ!
姉さんへ言いたいことはたくさんあるけど、とりあえず挨拶しないと。



し「こ…、胡蝶しのぶです!//いつも姉がお世話になってます…!」



カ「あらあら、しのぶったら緊張してるの〜?もう可愛いんだから〜♪」



恥ずかしくて下を向く。
姉さんめ…。



『…しのぶ、か…。私は不破海麗だ、海麗でいい。』



そう言って、ぽんっと私の頭に手を置くと、そのままスタスタと歩いて行ってしまった。



カ「………。うふふ、良かったわね♪」



し「な、何が!?」



カ「海麗がしのぶを気に入ったみたいだからよ♪嬉しいけど寂しいわね、まだまだ私だけの可愛いしのぶでいてほしいのに〜!でも、海麗なら良いかしらね♪」



そう言って、姉さんが抱き着いてくる。
聞くと、不破さんは寡黙で感情を表に出さない為、下の者から恐れられているらしい。
加えて、他人に興味をあまり持たないらしく、自分で名乗るなんて滅多にないんだとか。



カ「海麗が何を考えてるのかはわからないけど、しのぶは何やら特別みたいね♪じゃあ、柱合会議に行ってくるから終わるまで待っててね!」



姉さんはそう言うと行ってしまった。
ふぅ…と息をつき、先程の出来事を思い出す。



"しのぶ、か…"
"海麗でいい"



心地よい少し低めのアルト声。
ぽんっと手を置かれた場所に触れる。



し「っ…、私は何をしてるのかしら//」



姉さんが戻って来るまでに、何とか落ち着かないと…頭では分かっているのに、先程の出来事が何度も脳内で再生されて離れなかった。
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