雛見沢村・六軒島短編
□秘密の関係2
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夏妃side
ソワソワとしながら時計を眺める。
もうそろそろ着く頃かしら。
遡ること1ヵ月前、唐突に電話が鳴った。
夏「もしもし?」
"源「源次でございます。お部屋でお休みのところ申し訳ございません。奥様宛にお電話が。」"
夏「私に…ですか?相手は誰です?」
"源「それが、右代宮蕾亜様でして…。」"
夏「っ!!」
相手の名前を聞いて目を見開く。
そして、2週間前の出来事を思い出し顔に熱が集まる。
あれから、自分でもおかしいと分かっているけれど、彼女のいたずらっぽく笑う顔や優しい温もりが忘れられないのだ。
"源「奥様はお取り込み中だとお伝え致しましょうか?」"
夏「い、いえ!出ますので回してください。」
"源「承知致しました。」"
受話器を置くと、直ぐにまた電話が鳴る。
ドキドキとする鼓動を抑えながら受話器をあげる。
夏「も、もしもし?」
"『あ、もしもし?蕾亜です。お時間、大丈夫でしたか?』"
夏「えぇ、大丈夫ですよ。」
"『良かったぁ…。すみません突然。』"
夏「何かあったのですか?」
"『ん?うーん、何かあったというわけでもないんですけどねぇ…ちょっと仕事で行き詰まっちゃって…で、何となく夏妃叔母さんの声が聞きたくて(笑)』"
我慢出来なくて電話しちゃいました、と言う彼女にキュンとしてしまう。
今までこんなことは無かったのに。
"『はぁ…会いたいなぁ…。』"
夏「会いに、来てくださればよろしいのに。」
"『えっ?』"
夏「私は常にこの屋敷におりますので、会いたいと仰られるのなら…来てください…。」
待って、私は何を言っているのだろう。
やっぱり何かおかしい…私はどうしてしまったのだろうか。
"『いやぁ…ははは、参ったな…。』"
夏「どうかされましたか?」
"『今すぐにでも会いたくなっちゃったじゃないですか…。』"
夏「っ、いつでもお待ちしておりますよ。」
らしくない。
普段なら息が詰まるから他の親族なんて来てほしくはないのに。
この電話をきっかけに、蕾亜さんは2日に1回程のペースで電話をかけてくるようになった。
雑談だけの時もあれば、仕事の話もする。
時折、私にアドバイスを求め意見を取り入れてくれていることもある。
そんな時、私が不意に口にした事がきっかけだった。
夏「あ、すみません。そろそろ主人の出張の準備をしないといけないのを忘れておりました。」
"『出張?』"
夏「えぇ。何でも、主人が今動いているプロジェクトのスポンサーの方々と現地調査をするとかで1ヵ月程…。」
"『…それはいつからですか?』"
夏「え?えぇと…3日後ですが…。」
"『行きます。』"
夏「えっ…と?」
"『3日後、貴女に会いに行きます。私も1ヵ月くらい六軒島に出張しようかな〜(笑)』"
夏「で、ですが…蕾亜さんのお仕事が…。」
"『大丈夫ですよ、優秀な人材ばかりですから。パソコンも持っていきますし、何かあれば対応出来ます。てか、心配するところはそこなんですね。てっきり1ヵ月も居座るところに突っ込まれるかと思ってましたが(笑)』"
夏「ぅっ…。」
という流れで、今に至る。
朱志香は蕾亜さんが来てくれると聞いて大喜びしていた。
"コンコンッ"
紗「紗音です。蕾亜様が船着き場へご到着されたようです。もう間もなく、こちらへいらっしゃるかと。」
夏「わかりました。お茶の準備を頼みますね。」
紗「かしこまりました。」