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□照れ隠し。
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『ごったちゃん!ご飯いく?!』
「いやまたかい…」


ここはとあるテレビ局の控え室。扉に貼られている名前は四千頭身だ。

今日は昼からとある番組の収録があり、3人揃っての控室となる。
収録自体は全て終え、夜も深くなってきたころ。

別の仕事で局が一緒だった名無しさんが控室に飛び込んできた。


「先週も行かなかった?」
『先週は先週、今週は今週』
「先々週も行ったよね?」
『えっまさか私のこと嫌いだったのか』
「いや違うけどさ」


なぜこんなやり取りをしているのかと言うと。

名無しさんが、俺のことをゴリゴリに気に入っているからだ。


『また局が一緒になったから運命だなって思って。行かない?』
「いや…もう帰るだけだから良いけど」


ある時から、こんな風にご飯や遊びに誘ってくるようになった。

真意はわからないが、友達として俺を慕ってくれているらしい。
別に悪い気もしないので名無しさんの誘いを受けているが、それにしても頻度が多い。

好きすぎない?俺のこと。


『バッシーとつづちゃんも行く?』
「いや俺は良いや」
「俺も用ある」
『じゃ、ごたくん、ロビーで待ってる』
「はいはい」


名無しさんは都築と石橋にも明るく接する。普通に四千頭身のファンらしい。
けど誰からみてもわかるように、俺への誘いが多い。


名無しさんは控え室の扉を閉め、去って行った。


「…あのさ」
「ん?」
「お前ら付き合ってんの?」


つづちゃんが不思議そうに話しかけてきた。


「いや付き合ってないよ」
「あれで?!」
「うん」


驚くのも無理はない。
会う頻度が恋人そのものだ。


「なんで付き合ってないの、逆に」
「いやそんな感じないし」
「いや、名無しさんは確実に拓実が好きじゃん。なあ?」
「うん」


つづちゃんとバシから見てもそう映るよな。


「好きとか、そう言う展開はないの?」
「特にないよ」
「告白とかされてないの?!」
「されてないよ」
「アレで?!」


恋人と勘違いされるのもわかるが、俺たちはそう言う関係ではない。
特に名無しさんに好きと言われたわけでもないし、俺も言ってない。本当にただの仲の良い友達として接している。


「え、拓実は?」
「え?」
「拓実はどうなの、名無しさんの事」
「何が」
「好きなのかって聞いてんの!」


… 名無しさんのこと…。


「…改めて意識してみると動悸がおさまらない」
「好きじゃねえか笑!」


つづちゃんが俺の肩を叩いて突っ込む。

そう、俺は名無しさんのことが正直好きだ。
明るくって一緒にいると楽しいし、仕事に真摯な姿もかっこいい。いつのまにか目で追うようになっていた。
だから今のこの関係が美味しくもある。一緒に居れるし、フラれることもない。塩対応をしている風に見かけて、実は俺も楽しんでいる。

…故に、ヘタな事を言ってこの関係を崩すのが怖い。


「名無しさんも拓実のこと好きだと思うけどなあ」
「…良いんだよ別にこれで」
「ちょっとカマかけてみろって」
「うーん…」


カマねえ。
お互い傷つかない程度ならやってみても良いかもなあ。
…どうやってやんのか知らないけど。


「とりあえずメシ行ってくる」
「がんばれ拓実」
「モノにしろ」
「うるせーなあ」


茶々を入れてくる都築と石橋を軽くあしらい、ロビーで待っている名無しさんの元へ急ぐ。
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